2.最初の面接・相談(インテーク)
ケアマネジャーがケアマネジメントを進めていく際、各プロセスで必要となる知識や技術とは何でしょうか。プロセスごとの具体的な業務にそって、ケアマネジャーの役割を掘り下げてみます。まずは「最初の面接・相談(インテーク)」についてです。
「最初の面接・相談(インテーク)」には、利用者・家族からの電話、事務所への来訪などさまざまなパターンがあります。どのようなパターンであっても、信頼関係を築くうえで支障とならないよう、常識的な“初対面のマナー”を身につけましょう。
1.電話の受け方
初めて相談の電話をかけた方にとって、電話の対応が事業所の印象につながります。丁寧な対応とはっきりした受け応えが大切です。まず、@事業所名(と自分の名前)を名乗り、相手が名乗った後に、A挨拶をします(「いつもお世話になっております」など)。相手が名乗らない場合は、「失礼ですが」などと前置きして名前を尋ねるのが基本です。複雑な相談内容の場合もありますので、手元にメモ用紙を用意するとよいでしょう。
2.利用者宅を訪問する際の服装
訪問の際の服装は、利用者に不快感を与えないことが大原則です。清潔感を第一に考えます。「自分が利用者で、相手の訪問を受けるとしたらどう思うか」と考え、事業所内で話し合って基本的なルールを決めておくとよいでしょう。
3.名刺の差し出し方
事業所名、名前を名乗りながら、両手を胸の高さにして渡します。相手からの名刺を受け取るときも、胸より高い位置で受け取ります。利用者や家族に対しては、最初に利用者本人、次に家族の順番で渡すことを心がけましょう。また、名刺を差し出すのも受け取るのも、基本は両手で行います。
4.自己紹介で伝えること
インテークで行われる行為のなかでも、重要度が高いのが「自己紹介」です。事業所名と名前を告げただけで自己紹介を終了したと思ってはいけません。ケアマネジャーとして、「私はあなたのために、○○ができる」ということを伝えなければなりません。
例えば、「生活のなかでの困りごとの相談に乗るのが仕事です」など、ケアマネジャーの役割をわかりやすく簡潔に説明できる言葉を用意しておきましょう。
インテークの場面は、ケアマネジャーと利用者・家族の最初の出会いとなります。利用者・家族によっては、緊急性をともなっていたり、極めて不安定な状況に置かれていることも考えられます。そこで少しでも不信感を招くような対応をとれば、関係そのものが壊れかねません。さまざまな可能性を頭に入れ、状況を正しく推察することが、その後のケアマネジメントを展開するうえで重要になります。
1.命にかかわる緊急性を測る
ケアマネジャーの仕事のなかで最優先されるのは「相手の命を守る」ことです。利用者や家族から電話がかかってきた場合、まずは緊急性を測ります。「病気になった」「転んだ」「動けなくなった」「熱がある」「トイレに行けない」「食事ができない」「しゃべり方がおかしい」など、119番や医療機関に相談してもおかしくない内容の電話がかかってくることもあります。高齢者からの電話の場合、声に緊迫感がなくても重大な危機が進行していることもありますので注意が必要です。現在の状態や主治医について尋ね、主治医へ電話をしてもらったり、ご本人の了解のもとこちらから主治医に連絡することが必要な場合もあります。場合によっては緊急訪問し、その場で救急車を呼ぶといったこともあり得ます。
また、「病院から退院を迫られている」「介護者の具合が悪くなった」など、状況が急に変化した場合は、何らかの緊急支援が必要となります。
2.「誠実な応対」を行う
電話での応対にしろ、事務所での面談にしろ、相談をしてくる方は少なくとも「何らかの困りごと」を抱えています。相手の焦りや困惑を目の前にして、こちらも一緒になって焦ってしまっては、解決に向けた道筋を見失ってしまいます。大切なのは、どんな訴えであっても、まずは親身にかつ冷静に耳を傾けることです。ときには、いきなり「ヘルパーを頼みたい」「すぐに車いすを持ってきてほしい」「デイサービスに行きたい」「入所施設の紹介をしてほしい」「庭の植木が伸び放題で困っている」など、具体的なサービスや介護保険で対応できない希望が発せられることもあります。しかし、その背後にはさまざまな問題が隠れていることが多いのです。「この方はなぜ相談を持ちかけてきたのだろうか」と考えながら、誠実な応対を心がけることが大切です。
3.事業所内でルールを決めておく
新人のケアマネジャーにとって、インテークはとても難しい作業です。自分の事業所で受けるのか、他の機関を紹介するのか、初回面接にどのようにつなぐのかなど、不確定な要素が多いからです。どのようなキャリアのケアマネジャーであっても「正確な判断」を行うことができるよう、情報を整理しやすいフェイスシートを事業所で準備し、誰もがある程度の必要項目を聞き出せる仕組みをつくっておくとよいでしょう。同時に、「判断が難しい場合は電話を折り返す」などのルールを決めておくことも有効です。