5.サービス調整
ケアプランの原案を作成したら、具体的な支援を担うサービス事業者を選択します。選ぶ主体は利用者ですが、ケアマネジャーは選択の際のアドバイスを行い、利用者に代わって事業者とサービス内容についてやりとりをすることになります。
ケアマネジャーと各サービス機関のやりとりは、サービス提供の依頼に始まり、サービス担当者会議の招集、モニタリングにかかる情報交換など、さまざまな機会があります。これらをまとめて「サービス調整」とし、その際に必要となる基本的なマナーをあげてみます。
1.連絡の取り方
サービス調整におけるやりとりでは、他の専門職と直接対面する場合もあれば、電話やFAX、Eメール、手紙などのツールを使う場合もあります。速さや正確性などそれぞれの特長を把握し、状況に応じて最も有効な手段は何かを考えて使い分けます。
例えば、相手の意見とのすり合わせが必要なケースでは、当然、電話や対面が原則となります。ただし、相手が忙しい人の場合、なかなかつかまらないケースもあるでしょう。そのようなときは、FAXで「○○の件でご相談したいので、都合のよい時間帯に電話をください」などの連絡を入れておきます。Eメールを使う方法もありますが、相手が読まないまま時間が経過することもあります。急ぎの場合、あるいは重要な連絡で「やりとりの証拠を残したい」という場合は、FAXの方が有効でしょう。いずれにしても、通信手段については事前に相手側と話し合っておくことが望ましいと言えます。
なお、文書でのやりとりでは5W1Hを意識し、FAXやEメールでは儀礼的な要素を少なくして、より簡潔にまとめることを意識します。他者から送られてきた文書のなかで、「わかりやすい」「要点が正確にまとめられている」といったものがあれば、そうしたものを参考に、自分なりのひな型を作ってみるのもよいでしょう。
2.利用者の不安・不満を共有する
利用者が不安や不満を抱えたままサービスを受けていると、利用者のQOLに悪影響があるばかりか、後々介護事故などにつながるおそれがあります。利用者や家族は「お世話になっている」との思いから、事業所に不安や不満を伝えづらいものです。しかし、利用者が安心してサービスを利用できるようにするためには、思いを正直に話してもらうことが大切です。たとえネガティブな情報であっても、事業者同士で利用者の思いを共有しておきましょう。そうした情報はリスクマネジメントにおいて有用な情報となります。
1.利用者とサービス事業者のマッチングを図る
サービスを提供する事業所には、「認知症のケアに強い」「個別に対応してくれる」といった事業所ごとの特性があります。ケアマネジャーは利用者のニーズや個別性に合ったサービス事業所を選び、調整していくことが重要です。
事業所の特性を見極めるためには、事業所訪問の機会をつくり、サービス提供の様子を実際に確認したり、事業所スタッフと顔を合わせることが重要です。自分の目で一度も見ていない事業所を利用者に紹介するようなことは避けましょう。例えば、通所系サービスであれば、想定される利用者のサービス利用日(曜日)に合わせて訪問すると、より具体的な情報を得ることができるでしょう。
また、同じ事業所内でも、ヘルパーやスタッフにはそれぞれ個性があります。特に、業務の方向性を決めていく立場にある管理者やサービス提供責任者がどんな考えをもっているのか、事業所の方針や運営体制はどうなっているかなどを把握しておくことは重要です。
2.ケアプランを育てるという感覚をもつ
新人のケアマネジャーにときどきみられるのが、利用者と合意したケアプランの内容を重視するあまり、厳密な依頼をしてしまうケースです。「必ずこの時間に送迎してほしい」といった依頼の仕方では、サービス側が応えられなくなるおそれがあります。利用者・家族と相談したうえで、「だいたい午前のこの時間帯」「第一希望は○、第二希望は○」と、幅のある依頼をすれば相手も受けやすくなります。
また、最初のケアプランをつくった時点で心に留めておきたいのは、「はじめからパーフェクトなケアプランはできない」ということです。サービス事業所はケアマネジャーの把握していないさまざまな情報をもっています。最初のケアプランにこだわるのではなく、サービスを提供する人たちから情報をもらい、それを統合して全員でケアプランをよりよいものへと変えていくという意識をもつことが必要です。
3.日頃の関係づくりを大切にする
事業者間で質の高い連携を築くためには、事業所から情報をもらった場合のフィードバックが重要になります。すぐに行動が必要なケースではない場合も、その都度、情報提供に対して感謝の気持ちを伝えることが、よりよい関係づくりの基礎となります。