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サービス取組み事例紹介
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東京都港区・社会福祉法人春和会 港区立元麻布保育園

病気や障害があっても、みんなが一緒の保育園〜専門職の連携により保育所での医療的ケアを実現〜

 東京都港区の「港区立元麻布保育園」(指定管理者:社会福祉法人春和会)は、地域の保育ニーズに応えるため、区内で初めて医療的ケア児・障害児の集団保育も行う認可保育所として令和2年1月に開設しました。同園を開設した経緯や実践する保育・ケアの取り組みについて取材しました。


医療的ケア児・障害児を受け入れる保育所の開設経緯


 社会福祉法人春和会(法人本部:東京都江戸川区)は、医療法人4法人、社会福祉法人2法人などで構成する桐和会グループに属する社会福祉法人として平成24年2月に設立された。開設施設は東京都内において8カ所の保育所(小規模保育事業を含む)をはじめ、特別養護老人ホーム4カ所、乳児院等を運営している。
 さらに、同グループは「安心」と「まごころ」をスローガンに医療・介護・保育サービスを展開し、4カ所の病院をはじめ、診療所、特養、介護老人保健施設、保育所、グループホーム、在宅医療サービスなど、グループ全体で約70カ所の施設・事業所を運営している。
 同法人は、東京都港区が開設した23区で初めて医療的ケア児と障害児の集団保育を行う認可保育所「港区立元麻布保育園」の指定管理者となっている。同園を開設した経緯について、港区の担当者は次のように説明する。
 「港区では保育施設の整備・拡大に取り組むことにより、平成31年4月以降は待機児童ゼロを継続してきました。その一方で、平成19年に医療的ケアを必要とする児童の受け入れを求める内容の請願が採択され、区立保育所における心身に障害のある児童の受け入れが課題となっていました。請願の採択後、平成20年に医療的ケア児の受け入れに関する検討会を設置し、議論を重ねるなかで、平成28年に麻布地区にある国有地を取得することができ、区立保育所を開設して保育サービスのなかで医療的ケア児・障害児の集団保育を行うことを決定しました。その後、施設を運営する指定管理者の公募を行い、通常保育のなかで医療的ケア児・障害児の受け入れ実績のある社会福祉法人春和会を選定しました」。


令和2年1月に港区立元麻布保育園を開設


 令和2年1月に開設した港区立元麻布保育園の定員は200人で、そのうち医療的ケア児・障害児クラスの定員は20人となっている。医療的ケア児・障害児の受け入れにとどまらず、最長22時までの延長保育、休日保育、年末保育、一時保育などを実施し、地域の保育ニーズに応えている。
 建物は2階建てで、都心でありながら、子どもたちが水遊びのできる広い園庭(約約412m2)があることが特色となっている。
 「施設設計の工夫では、通常クラスと医療的ケア児・障害児クラスで別の入り口を設け、送迎の動線が交わらないようにしています。医療的ケア児・障害児クラスの入り口は、送迎車や緊急車両を横付けすることができるため、送迎や緊急時の対応もしやすくなっています。また、施設内は視認性のよい構造とすることで職員の目が届きやすい空間構成とし、医療的ケア児・障害児クラスの保育室は可動式の扉で3部屋に仕切ることができ、経管栄養を吊るすレーンを設置しています」(港区担当者)。
 そのほかにも、医療的ケアの必要な子どもは、座位や寝転がって活動することが多いため、床暖房と加湿機能を施設に組み込むことにより、状態の安定を図りやすい生活環境をつくった。


▲ 木の温もりが感じられる港区立元麻布保育園のエントランス ▲ エントランスの奥に設けられた絵本コーナーには、子どもの絵本だけでなく、送迎に来た保護者向けの子育てに関する書籍も用意

▲ 都心でありながら水遊びができる広い園庭を確保 ▲ 医療的ケア児・障害児用の入り口は、車両を横付けでき、送迎や緊急時の対応がしやすくなっている


受け入れ要件と入園までの流れ


 医療的ケア児・障害児クラスの受け入れ対象としては、医療的ケア児は、満2歳から利用可能となり、家庭での生活が安定していること、医療的ケアが日常生活の一部として定着し、主治医から集団保育が可能と認められていることなどを要件としている。障害児については、生後4カ月からで「身体障害者手帳」2級程度以上または「愛の手帳」2度(重度)程度以上の障害・疾病等により特別な配慮が必要なことを要件としている。
 入園までの流れについては、入園の申し込みに対し、港区の「障害児入所協議会」で、主治医の意見書を踏まえ、集団保育が可能であるかの判断を経て、園長や看護師リーダーが家庭訪問を行い、家庭での生活の状況、安全に過ごすための問題・リスク、必要な備品や対応などの情報収集を行う。
 入園内定後は、管轄の麻布地区総合支所管理課の課長をトップとして構成する「港区立元麻布保育園保育内容協議会」を開催。それぞれの入所児童について具体的な保育や医療的ケアの内容等を確認し、受け入れにあたっての留意点や支援内容等のアドバイスを行う。
 その後、園においてアセスメント表を作成し、これをもとに年間指導計画を作成してケアの具体的項目を立案する流れとなっている。アセスメント表は3カ月に1度見直しを行い、現在のケアを継続するか、検討すべきかを確認している。
 現在、医療的ケア児・障害児クラスでは、医療的ケア児7人と障害児6人の計13人が利用している。実施している医療的ケアの内容としては、胃ろうや経鼻胃管からの経管栄養、痰の吸引、気管切開部に気管カニューレを挿入した酸素吸入、人工呼吸器の管理、経鼻酸素などを行い、13人の利用者のうち8人を福祉車両で送迎している。


専門職や関係機関と連携し情報共有を図る


 医療的ケア児・障害児クラスの職員と役割について、園長の加苅則子氏は次のように説明する。
 「クラス担任として看護師7人(非常勤を含む)と保育士6人を配置し、医療的ケアはすべて看護師が担っています。保育に関する部分は保育士が中心となりますが、保護者対応では医療的な内容が多くなることもあり、看護師と保育士が状況にあわせて連携しながら行っています。あくまで障害児施設ではなく、保育所のなかで医療的ケアや障害児保育をどのように提供していくのかを考えているため、保育士については一般的な保育、障害児保育、病児保育の経験者に加え、地域の学童保育で保護者の意見を聴いた経験のある保育士など、さまざまな経験のある職員を配置しています」。
 また、看護師はゆるやかな担当制をとり、シフト勤務となることから、すべての看護師が同じ手順で対応できるようカンファレンスで情報共有を行っている。さらに、個別の子どものケース検討を行い、保育士を含めた職員全体で情報共有することに取り組んでいるという。
 関係機関との連携では、児童の状態の変化にあわせ、食事量や食事形態の変更、栄養補助剤の飲ませ方の工夫、インソールの使用など、具体的な事項について医療機関への確認を行っている。保護者を通じて主治医に確認するほか、理学療法士、作業療法士などに相談するケースも多く、自宅で利用する訪問看護事業所の担当者との情報交換も行っているという。


▲ 廊下は幅を広くとることで開放感があり、子どもの遊び場となるような仕掛けを施した ▲ 調理室は、大きな窓から子どもが調理作業をみることのできる設計とした

▲ ウッドデッキを敷いたテラスは子どもたちの遊び場となっている ▲ 施設内には車いす対応のエレベーターを設置


一人ひとりの利用者にあわせた食事形態が必要


 医療的ケア児・障害児の集団保育を実践するうえで運営の難しい点について、食事形態の多様さとスペースの確保をあげている。
 「当初の想定よりも、主治医などから食事の形態の指示は細かく、例えば、同じ胃ろうであっても、それぞれの子どもの発達段階により食事内容は異なります。食物アレルギーをもつ子どもも非常に多いため、13人の利用者がいれば、13通りの食事形態が必要になります。もし同様の取り組みをするのであれば、専用の調理師を配置するなど、人員体制を整える必要があると思います。また、医療的ケア児・障害児クラスでは、年齢や発達が異なる子どもが同じ保育室で混在し、寝ている子どもや動き回る子どもが一緒に活動することになります。さらに、ベビーベッドや個々にあわせた座位保持椅子、姿勢保持のためのクッション等を設置した場合、1人当たりの必要な面積が増え、保育室は非常に手狭になるので、安全面の確保や遊びを担保するためにも、スペースを工夫して活用する必要があると感じています」。
 そのほかにも、同園では医療ケア児・障害児クラスとそれ以外のクラスの子どもが、室内遊びや園庭で一緒に過ごす時間をもち、給食、行事の際など、日常的に交流する交流保育を行っていることも特色となっている。医療的ケアや障害の有無に関わらず、一緒に過ごすことは双方の成長や発達において意義があることを実感しているという。
  「小さいときから世の中にはいろいろな人がいて、自分とは異なる表現や感覚、特性をもつ人がいることを知り、多様性への理解が進むことは子どもたちにとって大きなメリットになっています。通常クラスの保護者には入園前の説明で医療的ケア児・障害児クラスがあることを伝えています。現在は、保護者の理解も進んでおり、なかには施設のコンセプトに共感して当園を選んだという保護者の方もいらっしゃいます」(加苅園長)。


職員の確保・定着に向けた取り組み


 全国的に不足する保育士をはじめとする専門職の確保・定着に向けた取り組みでは、法人・グループをあげて職員の福利厚生を充実させている。
 産休・育休制度や時短勤務などを整備し、職員が働き方を選択できる職場環境をつくるとともに、グループが運営する医療機関で受診した際、職員の医療費を法人が全額負担する医療費補助制度があり、職員の家族も対象としているという。
 さらに、港区では住宅費負担の軽減により保育人材の確保・定着を図るため、区内に住む保育職員に対し、保育所等の事業者が宿舎を借り上げている場合に、家賃補助を行っている。
 「当園は、最長22時まで延長保育を行っているため、遅番の職員は一般的な保育所と比べて退勤時間が遅くなります。家賃補助があることで家賃が高い港区でも家を借りることができ、通勤の負担も少なくなることから、多くの職員が活用しています。港区の家賃補助は採用にも大きく影響しており、このような支援制度がなければ職員の確保・定着は難しいのではないかと思います」(加苅園長)。
 今後について、港区の担当者は次のように説明する。
 「これまで当園では利用申請を受けた医療的ケア児の入園を断ったケースはなく、区としては受入れ基準内でできるだけ要望に応えていきたいと考えています。その一方で、療育施設や病院とは異なる集団保育という環境のなかで、子どもたちの育ちを促して、安全・安心にお預かりするために、今後も医療的ケア児の保育の充実を目指しています」。
 地域の保育ニーズに応え、専門職の連携により保育所で医療的ケア児・障害児の受入れを実践する同園の取り組みが広がることが期待される。


一緒に育ち、学びあう保育所を目指す
社会福祉法人春和会
港区立元麻布保育園
園長 加苅 則子氏
 当法人は、医療的ケア児・障害児の集団保育を行う保育所の指定管理者の指定を受けていますが、港区には保育内容協議会を開催し、区の担当者や関係機関から意見を聞く機会をつくっていただき、子どもたちを安全・安心にお預かりすることにつながっています。施設設計においても、さまざまな配慮や工夫がされており、私たちが困ったことや保育・ケアをしやすいように提案するたびに、一緒に考えて対応していただけるので本当に助かっています。
 今後、取り組んでいきたいこととしては、とくに保育の目をもった看護師の育成に力を入れながら、障害の有無に関わらず、みんなが一緒に育ち、助けあい、学びあうことが日常的に行える保育所を目指していきたいと考えています。


<< 施設概要 >>令和3年10月現在
施設長 加苅 則子 施設開設 令和2年1月
定員 200人
(0歳児:25人、1〜5歳児:各31人、医療的ケア児・障害児クラス:20人)
職員数 73人
住所 〒106‐0046東京都港区元麻布2丁目14番12号
TEL 03−5422−7338 FAX 03−5422−7998
URL https://www.city.minato.tokyo.jp/shisetsu/gakkokyoiku/hoikuen/122.html


■ この記事は月刊誌「WAM」2021年12月号に掲載されたものを一部改変して掲載しています。
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