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DPCデータを活用した経営改善策

全6回にわたって、病院内のさまざまな部署で、そのようにDPCデータを活用し経営につなげていくかをみていきます。


<執筆> NPO法人病院経営支援機構  藤井 将志

第1回:全国のDPCデータから自院の戦略を策定するには


DPC公開データによる分析


 「DPCデータって、医事課や経営企画室にしか関係ないんじゃない」という声が聞こえてきそうですが、そんなことはありません。どんな部署でも、DPCデータを活用して経営改善をすることができます。本稿では、病院内のさまざまな部署で、どのようにDPCデータを活用し経営改善につなげていくかをみていきます。
 今回は医療機関の戦略を策定するにあたり、DPCデータを活用する事例です。DPCデータというと自院の診療行為を集約したデータのことを考えがちですが、全国のDPCデータは年に一度、厚生労働省のホームページで公開されています。この公開されたデータを分析することで、全国のなかでの自院のポジショニングや、地域における自院の戦略を策定することができます。
 まず厚労省が公開しているDPCデータにアクセスしてみてください。「DPC評価分科会」と検索をすると定期的に開催されているDPC評価分科会のページにアクセスすることができます(*1)。最新のデータは平成26年第5回の「資料」というページに掲載されています。
 同ページを開いていただくと、PDFやエクセルといった形式で数十ものファイルがダウンロードできるようになっています。初めて見る人にとってはあまりにも膨大な量に思え、見る気がしないかもしれませんが、時間をとって一度だけじっくりとすべての項目に目を通すことをお勧めします。どのような分析も大元のデータがどのような性質のものか知っておくと、分析の視点が深まります。毎年ほぼ同じ項目で公開されるので、一度見ておくと後は楽になります。

*1:http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000008ffd.html#shingi128164

全国における自院の位置を知る


 目的に応じていろいろなデータが分析できますが、いくつかピックアップし説明します。まず自院が全国でどのくらいのポジションに位置するのか、もしくは全国でも有名な○○病院と比べてどこが違うのかを比較分析する、という視点でみていきます。
 例えば「自院の得意とする疾患○○は全国でどのくらいの順位なのか」、「自院の平均在院日数は短いのか・長いのか」といった分析テーマを与えられたとしましょう。
 まず「自院の得意とする疾患○○は全国でどのくらいの順位なのか」についてみていきます。個々の医療機関別に症例数がわかるデータで最も詳細なものは「参考資料2」「(10)疾患別・手術有無別・処置2有無別集計」になります。もう少しざっくりと傾向を分析したい場合は「(2)MDC別・医療機関別件数」から、MDC別の症例数を比較するとよいでしょう。
 しかし、これらのデータになると非常に詳細かつ膨大になるので、エクセルデータを開いただけで抵抗感を感じる人は少なくないでしょう。そこでお勧めなのが「カルー(Caloo)」という無料サイトです(*2) 。厚労省のデータをもとに、各医療機関の症例数がまとめられています。トップページから自院の病院名で検索してみてください。検索結果の自院のページから「治療実績」のページをみると、疾病別に県内、全国の順位がわかります。
 次に「自院の平均在院日数は短いのか・長いのか」についてみていきます。よく出てくる病院ごとの平均在院日数は、その病院の疾病構成が考慮されていないため、単純に比較しても意味を成しません。
 そこで、こうした病院ごとの疾病構成を補正した在院日数の長短を比較できる指標が公開されています。「参考資料1」「(14)在院日数の平均の差 MDC別」を見てください。わかりにくい指標が並んでいますが、「医療機関別在院日数の平均」が単純な平均在院日数です。「全国の疾患構成に補正した場合」という指標が、患者構成を補正した各医療機関の平均在院日数になります。この数字が全DPC病院の平均値に比較して短ければ「在院日数の指標」が1より大きくなります。
 平成25年度データで症例数が5,000症例以上で在院日数の指標が最も高いのは東京都立小児総合医療センターの1.40となっています。つまり、同院は全国の患者構成に補正した在院日数が9.52日と、全国平均14.64日に比べて非常に短くなっていることを意味しています。このデータにはMDC別の同指標もエクセルの別シートにあるので、病院全体の長短が分かったら、MDC別に深掘りすることもできます。「全国より自院の在院日数が長い疾病は○○である」ということまでわかります。
*2:http://caloo.jp/

近隣病院との比較分析をする


 続いて近隣の医療機関との比較分析の事例を取り上げます。例えば「紹介患者の数は多いのか」「二次医療圏内で疾病のシェアはどのくらいか」といった分析テーマを与えられたとしましょう。  まず「紹介患者の数は多いのか」についてみていきます。「参考資料1」「(7)他院よりの紹介の有無」を見てください。各病院の紹介患者数(入院患者)が比較でき、過去からの推移も調べられます(図表)。紹介患者を集められている施設がどこなのか一目瞭然です。残念ながら疾病別の件数はわかりませんが、後述の手法で紹介患者数が増えている医療機関の疾病別シェアや患者数の推移を分析することで、おおよそどの疾患で紹介患者が増えているか推測することもできるでしょう。


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 次に「二次医療圏内で疾病のシェアはどのくらいか」についてみていきます。「参考資料1」「(18)医療圏別MDC患者数」を見てください。二次医療圏ごとのMDC別患者数が出ていますので、この数字を分母にして、自院の患者数を分子にすると、疾病別のシェアが算出されます。ざっくりと自院の強みがどこにあるのかを確認するうえでは、有用な指標となります。すでにシェアが高い領域はさらに伸ばし、力があるはずなのにシェアが思うように高くない領域は、患者集めなどの対策の検討が必要になります。  DPC公開データをもとに分析できる事例を提示しました。DPCデータが公開されていない時にはなかなか難しかった、他院の症例別件数などが毎年わかるようになり、経営戦略の策定に非常に参考になります。何らかの改善に取り組んだ施設や、医師数の変動がある施設など、地域で収集された情報とあわせて考えると、合点がいく指標が散見されることでしょう。公開されたデータの多くはエクセルで入手できるので加工も容易にできます。ぜひさまざまな角度から分析し、経営戦略の立案に役立ててください。

※ この記事は月刊誌「WAM」平成25年10月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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