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兵庫県神戸市・医療法人社団慈恵会 新須磨病院

地域で一番親切、安全、最高の医療を目指して

 福祉医療機構では、地域の福祉医療基盤の整備を支援するため、有利な条件での融資を行っています。今回は、その融資制度を利用された兵庫県神戸市にある新須磨病院を取りあげます。同院は、地域の基幹病院として耐震化整備と医療機能の強化を図るため、病院の移転新築を行いました。新病院の概要や取り組みについて取材しました。

※この記事は月刊誌「WAM」平成29年12月号に掲載されたものです。


13施設からなる医療・介護の提供体制を整備


 兵庫県神戸市にある医療法人社団慈恵会新須磨病院(一般147床)は、昭和35年12月の開設以来、「質の高い医療を実践し、患者本位の信頼される病院を目指す」という理念のもと、地域の中核病院として地域医療を支えてきた。
 法人施設は、新須磨病院をはじめ、リハビリテーション病院(44床)やクリニック2カ所(人工透析、健診センター)、介護老人保健施設(入所定員80人)、訪問看護ステーションのほか、医療系専門学校を開設。さらに関連法人が運営するクリニックや有料老人ホーム2カ所、医療系専門学校があり、「医療」、「介護」、「教育」を3本柱とした13施設からなる慈恵会グループを形成し、シームレスな医療・介護の提供体制を整備している。
 そのほかにも、平成5年に公益財団法人日本二分脊椎・水頭症研究振興財団を設立し、先天性難病である「二分脊椎」と「水頭症」の研究活動の助成や啓蒙活動に取り組んでいる。
 新須磨病院が地域で担ってきた役割について、理事長・病院長の澤田勝寛氏は次のように語る。
 「当院のある神戸市須磨区は、中小規模の病院が10施設ほどしかない地域ですが、19診療科を有する総合病院として、1日の外来患者数は約600人、救急受け入れは年間1200〜1300件、手術件数は年間2200〜2300件に達するなど、須磨区南部地区の拠点病院としての役割を担ってきました。提供している医療の特色としては、地域に急性期病院が比較的少ないなか、外科系の専門治療にも力を注いできました。平成4年には西日本で初めてガンマナイフを導入し、これまでの治療件数は9000件を超え、日本でも有数の治療実績となっています。また、平成14年には全国に先駆けて創傷治療センターを立ち上げ、質の高い創傷治療を提供しています。当時、創傷治療を行う施設は国内に2カ所しかなく、評判を聞いて全国から多くの患者が集まり、創傷治療を全国に普及させることにつながりました」。
 そのほかにも、糖尿病の認定施設として先端的な治療を行っていることも特色となっている。


▲明るい雰囲気のある総合受付 ▲一般病棟の多床室

▲ガンマナイフ治療は、これまで9000件と日本有数の治療実績を誇る ▲地下1階にある広々とした空間のリハビリテーション室


平成27年9月に病院の移転新築を実施


 同院は、耐震化整備と医療機能の強化を図るため、平成27年9月に移転新築を実施している。
 移転新築した経緯としては、病院の開設から60年近くが経ち、阪神淡路大震災には耐えたものの建物の老朽化が進むとともに、増築を重ねてきたことで機能的・構造的にも限界にあったことから、以前から建て替えを計画していた。しかし、地域内に移転に適した土地が見つからず、法人が運営するクリニックや介護施設などの施設を地域に集約しているため、病院を遠隔地に建てることもできずに計画は難航していたという。そのようなとき、病院から約150mの距離にある他病院の移転が決まり、交渉を経て跡地を入手するとともに、その隣接地にはもともと同法人が所有する駐車場があり、それを併せ約4600uのまとまった土地を確保することができた。
 その土地に建物を建築し、着工から竣工まで約1年半を経て、平成27年9月に新病院を完成させている。
 完成した新病院の外観は、住宅地に立地していることから、白とモスグリーンを基調とした配色を施し、地域に溶け込むように配慮したデザインを採用した。


▲待合室前の廊下からは、植栽した中庭を眺めることができる ▲屋上には見晴らしのよい庭園を設置。患者や職員の憩いの場になっている

施設機能の強化により効率的な医療提供が可能に


 医療機能の強化では、手術室を3室から4室に増やしたほか、既存のSCU(脳卒中集中治療室)6床に加え、HCU(高度治療室)を新設し、救急医療体制を整備した。医療設備への投資も積極的に行っており、世界でも数台しか稼動していないアンギオ装置(血管造影装置)の設置をはじめ、MRI装置2台を最新機種(3テスラ)に買い換えたほか、脳梗塞や創傷の治療効果を高めるために、高気圧酸素治療装置を新たに導入している。
 施設設計では、効率的に医療を提供していくために機能的な動線にこだわった。建物を西館と東館に分け、西館に外来やリハビリ、一般病床、検査部門、東館にはHCUやSCU、手術室、脳外科の病棟などを集約し、症状に応じて縦の動線のみで治療を完結できる構造にした。このようにすることで、患者の負担が軽減し、効率的な医療提供が可能になったという。
 急性期治療を終了した患者の退院後の支援体制では、MSWや看護師、社会福祉士など6人を配置した地域医療相談センターが担い、慈恵会グループの運営するリハビリテーション病院や老健、訪問看護につなげるほか、地域の医療機関や介護施設との連携を進めている。
 「今でこそ、どの病院でも医療連携室などが中心になり、医療連携を行っていますが、当院ではかなり早い段階から連携体制をつくってきました。グループ内の連携や地域の医療機関との前方・後方連携を一括管理することで、非常にスムーズに連携を図ることができています。地域連携を円滑にしていくためには、当たり前のことですが、『依頼を断らない』ことが大切です。そうすることで信頼関係が構築され、紹介・逆紹介を推進していくことができると考えています」(澤田理事長)。


働きやすい環境づくりとして、保育所を運営


 また、医療スタッフの確保が全国的な課題となっているなか、同院では比較的安定して人材を確保することができている。
 医師については、まだ十分ではないとしているものの、147床の中小規模病院で40人の常勤医師を確保している。医師の確保策としては関連病院として位置づける神戸大学との連携を密にしていることで、脳外科や整形外科、形成外科などを中心に質の高い専門医師の派遣を受けており、スタッフからの紹介など、横のつながりから入職するケースも少なくないという。
 一方、看護師の状況について、看護部長の土肥加津子氏は次のように語る。
 「私は日本看護協会から4年前に着任したのですが、当時から定着率がよく、離職率も8%ほどでした。年齢層も20〜60歳代と幅広く、60歳代でも夜勤専従や、HCU勤務できるなど、互いに助けあうという職場風土があることが高い定着率につながっているのではないかと思います。看護師の採用活動は、一般的なハローワークや人材派遣会社も活用していますが、奨学金制度を導入し、多い年には5〜6人の利用があります。職員用の保育所を運営していることも人材確保や定着につながっている大きな要因となっています」。
 同法人は、福利厚生として病院から徒歩3分の場所にマンション型の職員寮(6階建て全45戸)を整備し、女性の働きやすい環境づくりとして、1階に職員専用の「カンガルー保育所」を開設している。保育所には保育士10人を配置し、0歳児から学童まで受け入れており、夜勤をする職員のために24時間保育や病時保育、学童保育も実施し、多くの職員が利用している。
 保育所があることを理由に応募してくる職員も多く、看護師の半数近くは子どもをもつ母親で、出産を機に離職する女性職員はほぼいない状況だという。
 また、医師・看護師以外の専門職に関しては、病院が母体となった医療系専門学校(9学科、定員1040人)を開校し、質の高い専門職を養成していることで潤沢に確保することが可能となっている。

院内にとどまらず、看護の視野を広げる研修を実施


 職員の教育体制については、各専門職や全職種を対象とした多様な研修を実施している。
 「看護師については、新人看護職員は厚生労働省のガイドラインに沿って行い、2年目以降は、院外の研修もどんどん活用します。何より日々の看護実践の経験の積み重ねが大事だと考えています。今後は病院内だけでは立ち行きませんので、暮らしも見据えられる自律した看護師を育成していく必要があります。そのため、グループ法人の訪問看護ステーションの1日体験研修や病棟の看護師が患者さんの自宅に訪問する取り組みも少しずつ始めているところです。いつでも誰でも学べる機会を増やし、キャリアを考えることのできる教育環境づくりに努めています」(土肥看護部長)。
 そのほかにも、研修の一環として、院内の教育委員会が企画した勉強会「寺小屋」を毎週木曜日に開催している。
 「『寺子屋』は、職種を問わず自由参加の勉強会で、取り組みを始めて14年目になります。ただ、どうしても長くやっているとマンネリ化してしまう面がありますので、表彰制度を導入し、半年に1度、参加率の高い職員を表彰して報奨金を贈呈しています。同様に、患者さんへの接遇などの職員間投票を行い、上位者を表彰することも行っています。意欲的な職員をしっかり評価する環境をつくり、モチベーションを高めてもらうことにつなげています」(澤田理事長)。
 また、理事長自ら院内報「ひとり新聞」を毎週発行し、院内情報の共有化・コミュニケーションの向上を図るなど、風通しのよい職場づくりにつなげている。


▲働きやすい環境づくりとして、病院から徒歩3分の場所に職員専用の保育所を開設 新須磨病院の職員の皆さん
左から看護部長の土肥加津子氏、事務長の植田光利氏、経理部長の井上勝文氏

来年1月に地域包括ケア病棟の新設を予定


 今後の展望について澤田理事長は、さらに地域の医療ニーズに対応した医療提供体制を整備する必要性をあげている。
 「須磨区は高齢化率が30%を超え、独居高齢者や老老介護などの世帯が急増していることを日々の診療から実感しており、退院後の受け皿の確保が喫緊の課題となっています。このような地域ニーズに対応し、受け皿を確保していくため、これまでは急性期病院としてやってきましたが、来年1月に1病棟を地域包括ケア病棟に転換することを予定しています。それにより、地域の開業医からの緊急対応やレスパイト入院などの受け皿を確保するとともに、地域との連携を深めながら、高齢化社会に対応した医療を提供していきたいと思います。また、同時に地域の基幹病院として、各診療科の専門性と質を高めていくことも重要だと考えています」。
 地域の医療ニーズに応えながら、高齢化社会に対応した医療提供を実践する同院の取り組みが今後も注目される。


高齢者総合支援センターの開設を構想
医療法人社団慈恵会 新須磨病院
理事長・病院長 澤田 勝寛氏
 当院は昭和35年の開設以来、地域の中核病院として良質な医療提供に努めてきました。現在は関連施設も増え、新須磨病院を中心にした13施設からなる慈恵会グループを形成し、シームレスな医療と介護を提供するとともに、地域で一番親切、安全、最高の医療を目指しています。
 また、高齢化が進行した地域の医療ニーズに対応していくために、来年1月に地域包括ケア病棟を新設することを予定していますが、中長期的な展望としては、「高齢者総合支援センター」を開設したいという想いがあります。
 センターでは、高齢者の受け皿となる居場所をつくり、介護用品の購入や一時預かりなどを行うことをイメージしています。そこに行政の出張所に入ってもらい、介護申請などの行政手続きができるようになれば、利便性も高まるのではないかと考えています。


<< 施設概要 >>
理事長/院長 澤田 勝寛
職員数 319名(平成29年11月現在) 法人設立 昭和35年12月
病床数 147床(うち、HCU8床、SCU6床)
診療科 内科、外科、整形外科、形成外科、脳神経外科、循環器内科、心臓血管外科、泌尿器科、皮膚科、婦人科、耳鼻咽喉科、眼科、神経内科、心療内科、歯科、歯科口腔外科、リハビリテーション科、放射線科、麻酔科
法人施設 新須磨リハビリテーション病院/新須磨クリニック/新須磨透析クリニック/介護老人保健施設いきいきの郷/もみじ訪問看護ステーション/北須磨訪問看護リハビリセンター/神戸総合医療専門学校
グループ法人 学校法人澤田学園(松江総合医療専門学校)、医療法人腎友会(腎友会クリニック)、公益財団法人日本二分脊椎・水頭症研究振興財団、株式会社神戸健康管理センター(有料老人ホーム「エリーネス須磨」、「介護の家」)
住所 〒654 − 0048 兵庫県神戸市須磨区衣掛町3丁目1番14号
TEL 078−735−0001 FAX 078−735−5685
URL http://www.jikeikai-group.or.jp/


■ この記事は月刊誌「WAM」平成29年12月号に掲載されたものを掲載しています。
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