トップ背景

トップ

高齢・介護

医療

障害者福祉

子ども・家庭

知りたい

wamnetアイコン
検索アイコン
知りたいアイコン
ロックアイコン会員入口
トップアイコン1トップ |
高齢アイコン高齢・介護 |
医療アイコン医療|
障害者福祉アイコン障害者福祉|
子どもアイコン子ども・家庭
アイコン



勤怠管理システム・勤務シフト作成支援システム
福祉医療広告

高齢・介護
医療
障害者福祉
子ども・家庭

サービス取組み事例紹介
トップ

— 群馬県沼田市・社会福祉法人久仁会 いきいき未来のもり —

医療・介護・福祉の複合体で誰もが住みやすい地域づくりを目指す

 福祉医療機構では、地域の福祉医療基盤の整備を支援するため、有利な条件での融資を行っています。今回は、その融資制度を利用された群馬県沼田市にある「いきいき未来のもり」を取りあげます。同施設は「0歳から100 歳まで」をコンセプトに、子どもや高齢者、障害のある子どもが交流を図ることで、互いを思いやり、支えあう心を育む居場所づくりを目指しています。施設概要や取り組みについて取材しました。

地域に根ざした医療・介護・福祉サービスを提供


 群馬県沼田市にある医療法人大誠会グループ(田中志子理事長)は、昭和63年の設立以来、「地域といっしょに。あなたのために。」というグループ理念のもと、地域に根ざした医療・介護・福祉サービスを提供し、地域包括ケアシステムの中核を担っている。

 開設施設は、群馬県認知症疾患医療センターを担う内田病院(99床)を中心に、介護老人保健施設、サービス付き高齢者向け住宅、グループホーム、在宅サービスなどを併設している。同院は認知症ケアに力を入れており、縛らない看護、身体拘束ゼロを実践している。国が認知症ケアを推進し、その人の笑顔を引き出すケアを行っているなかで、国内にとどまらず国外からも視察団体が訪れている。

 平成19年に設立した社会福祉法人久仁会では、グループのなかで子育て支援や高齢者および障害児・者の生活支援の役割を担っており、特別養護老人ホームやデイサービス、放課後等デイサービス、学童クラブ、配食事業などを開設し、医療・福祉・生活支援サービスを総合的に展開している。これら開設施設は内田病院を中心として500mの範囲内に集約されており、誰もが住みやすい地域づくりを目指している。

 同グループのある利根沼田地域の現状について、グループ本部・まちづくり部部長の澤野るみ子氏は次のように語る。

 「直面している課題としては、人口減少が推計されており、高齢者を支える世代がいなくなる危機感のある地域になります。当グループとして、この現状を食い止め、『誰もが住みやすい地域、各世代が集まる地域』にしていくためにも、地域創生を見据えた地域包括ケアシステムを構築する必要性があると考えたことから、『子どもとお年寄り、障害があってもなくても、自然な交流が図れる地域。互いに支えあえる地域を創る』という基本理念のもと、12 年前から本格的に地域づくりに取り組んでいます」。

 具体的な取り組みとしては、医療・介護・福祉の複合体として地域の子どもから高齢者、障害者の予防から療養まで切れ目なく生活全般をサポートする体制を整備し、地域交流や生きがいづくり、就労の場などを提供している。


地域交流や生きがいづくりに取り組む


 地域交流や生きがいづくりの取り組みでは、内田病院内で実施している「いきいきラウンジ活動」があり、趣味や得意なことをもつ利用者や地域住民に講師になってもらい、書道や手芸教室、踊りの会などを実施し、講師や参加者の生きがいにつなげている。同様の取り組みとして「いきいき工房みんなの家」では、同グループが所有する民家を地域住民に無料で開放し、各種活動や学びの場に提供している。

 また、グループでは野菜やりんご畑も所有し、「みんなの農業」として職員と一緒に利用者や地域住民が作物を栽培している。他法人が運営する障害者支援施設の利用者にも参加を呼びかけ、収穫する喜びを体験してもらうなど地域交流の場にもなっている。この農作業は今年度から地域の高齢者・障害者の就労の場にすることを構想しているという。

 そのほかにも、地域住民の健康増進とコミュニケーションの場として「いきいきトレーニングセンター」を開設。利用料は1日500円で子どもから高齢者まで誰でも利用が可能となっている。

 地域の関係機関との連携や取り組みとしては、「医療福祉勉強会」と「木漏れ日の会」という2つの活動の事務局を務め、地域における医療・介護・福祉を推進している。


グループ理念を具現化した複合施設を開設


 さらに、社会福祉法人久仁会は、グループの理念を具現化した施設として、平成29年7月に「0歳から100歳まで」をコンセプトにした複合施設「いきいき未来のもり」を開設した。

 同施設は、定員90人の保育所をはじめ、共生型のデイサービス(定員20人)、放課後等デイサービス(定員10人)、学童クラブ(定員30人)、児童発達支援事業(定員10人)の5事業を併設し、子どもや高齢者、障害のある子どもたちが日常的な交流を図ることで、互いを思いやり、支えあう心を育むことを目指している。

 「実施事業のうち、デイサービス、放課後等デイサービス、学童クラブは既存の事業所を移設したもので、就学前の障害児の療育を行う児童発達支援事業は、地域にはこのような子どもたちの受け皿が少なく、ご家族は県外に移り住まなくてはならない現状があったことから、住み慣れた地域で生活してもらえるよう新設しました。医療ケアのニーズが高い子どもも少なくありませんが、近隣に母体となる病院があることも大きな強みになっています。児童発達支援事業と学童保育は利用ニーズが非常に高いことから、現在は開設時より定員を増員して運営しています」(澤野氏)。

 保育所については、これまで同グループで運営していた院内保育所(定員19人)を、企業主導型保育事業の補助金を活用して定員を拡充。移設に伴い、院内保育所の実施場所では、これまで地域になかった病児保育事業を新たに開始している。


▲保育所のホールで活動する子どもたち ▲デイサービスからホールで遊んでいる子どもたちを見守る利用者

▲2階には保護者や利用者が子どもたちの活動を眺めることができる渡り廊下を設置した ▲採光がよく広々とした保育所の廊下。雨や雪の日でもかけっこなど、のびのびと活動できるように配慮


交流が図りやすい設計施設の工夫


 「いきいき未来のもり」の施設設計について、管理部長の石田美恵子氏は次のように語る。
 「施設設計の特色としては、多世代交流が図りやすいように、できるだけ仕切りを設けず、廊下幅なども施設基準より広く設計しています。施設内の床は畳に似たフローリングにすることで、どこでも座ることができ、交流の輪が生まれるように工夫しています。また、デイサービスや保育所などを併設する事業所は、制度上では壁で仕切らなければならないのですが、それでは当施設の目指す交流ができないと考えたことから、行政と交渉していくなかでデイサービスと保育所のホールの仕切りをガラス貼りにすることを認めていただきました。そのため、高齢者はデイサービスにいながら、ホールで遊んでいる子どもたちの姿を見ることができる環境となっています」。
 そのほかにも、施設の2階には利用者や保護者がホールで活動している子どもの様子を眺めることのできる渡り廊下を設置している。
 多世代交流を図る設計の工夫としては、子どもたちが園庭へ遊びに行く際にはデイサービスを通る動線にしたほか、施設内にらせん状のすべり台を設置し、2階の子どもの活動スペースと1階のデイサービスをつなぎ、自然な交流が生まれる仕掛けをつくった。
 なお、すべり台部分は折りたたみ式の間仕切りを設置して施錠できるようにし、感染症対策にも配慮した設計としている。



▲施設内に設置したすべり台は、2 階の子どもの活動スペースから1 階のデイサービスをつなぎ、自然と交流が生まれる仕掛けをつくった

▲社会福祉法人久仁会いきいき未来のもり
管理部長 石田 美恵子氏

日常的な多世代・多様性交流の取り組み


 多世代交流の取り組みでは、各事業所のリーダーが中心になり定期的にイベントを企画し、餅つきのイベントでは子どもたちは高齢者を応援しながらやり方を教わったり、音楽の時間には一緒にドラムセッションなどを行っている。
 また、イベントに限らず、日頃から交流できるかたちにしているため、子どもたちがつくったおやつを高齢者に提供し、一緒に食事をしたり、広い廊下で、デイサービスの利用者が子どもに絵本の読み聞かせをしているのも日常的な光景となっている。
 「生きがいのある高齢者は生存率が高い傾向にあるというデータもありますが、施設内で子どもと接したり、趣味活動をすることが高齢者の生きがいになり、健康寿命が延びることを期待しています。まだ開設から間もないものの、デイサービスの利用者は笑顔が増え、積極的にリハビリに励むようになるなど、すでによい効果が出ています。子どもたちにとっても核家族が増えているなか、小さい頃から障害のある子どもや高齢者と一緒に生活することや障害のある子どももない子どもも同じ施設のなかで保育を受けられる統合保育があたり前になっていますので、多様性を認めあえる共生社会を自然と学ぶ機会になっています。そのため、社会に出たあとも、そのような人たちとの接し方や、どのような支援をすればよいかということがいつの間にか身につく環境にあると考えています」(石田氏)。
同施設にも県内に限らず、全国から同様の複合施設の開設を考えている社会福祉法人や医療法人の視察が相次いでおり、この取り組みの効果などを全国の福祉関係者に広く発信していきたいとしている。

地域づくりが人材確保にもよい影響


 現在、医療・福祉スタッフの確保が全国的な課題となっているなか、同グループでは比較的安定して職員を確保することができており、誰もが暮らしやすいまちづくりに取り組んでいることが人材確保にもよい影響をもたらしているという。具体的には、さまざまな事業体を運営しているため、自分にあった仕事を選択できることや、地域ニーズに対応しながら地域になかった機能を提供することにより新たな仕事がうまれ、これまで市外に出て働かなければならなかった人たちが地域に戻ってきていることが人材の確保につながっているという。
 地域創生を見据えた地域包括ケアシステムの実現に向け、誰もが暮らしやすいまちづくりを実践する同グループの今後の取り組みが注目される。


▲障害のあるなしに関わらず、ソファーで一緒にくつろぐ子どもたちの様子 ▲階段下を活用したスペースは、子どもたちのお気に入りの場所になっている

▲施設内では高齢者と子どもたちの交流が日常的になっている ▲施設内は学童クラブの子どもたちの元気な声が聞こえてくるため、常に活気がある

福祉以外の分野と福祉をつなぐ
医療法人大誠会グループ本部
まちづくり部 部長 澤野 るみ子氏
 社会福祉法人久仁会の今後の展望として、放課後等デイサービスを卒業した子どもたちや認知症のある人たちが、住み慣れたこの地域で生活が続けられるように就労支援などの受け皿をつくる予定です。
 また、地域創生を見据えた地域包括ケアシステムの実現に向けては、当グループだけでは限界がありますので、地域との協働が重要になります。
 例えば、介護保険サービスなどのフォーマルなサービスは地域に充足されつつありますが、インフォーマルの部分が育たなければ生活者を支えることはできません。インフォーマルなサービスや福祉以外の分野と福祉をつなげることが地域創生のキーワードになると考えています。


<< 施設概要 >>
理事長 田中 志子 施設開設 平成29 年7 月
施設管理者 石田 美恵子 併設施設 保育所(定員90人)
デイサービス(定員20人)
学童クラブ(定員30人)
放課後等デイサービス(定員10人)
児童発達支援事業(定員10人)
職員数 44 人(グループ全体550 人)
住所 〒378 − 0005 群馬県沼田市久屋原町444 − 2
TEL 0278−25−9020 FAX 0278−25−9422
URL https://kyujinkai.com/


■ この記事は月刊誌「WAM」2018年7月号に掲載されたものを一部改変して掲載しています。
  月刊誌「WAM」最新号の購読をご希望の方は次のいずれかのリンクからお申込みください。




ページトップ