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青森県むつ市・社会福祉法人青森社会福祉振興団

未来志向の社会福祉を実践
〜ICT・介護ロボットの活用、国内外での人材育成、他法人との連携〜

 福祉医療機構では、地域の福祉医療基盤の整備を支援するため、有利な条件での融資を行っています。今回は、その融資制度を利用された青森県むつ市にある社会福祉法人青森社会福祉振興団を取りあげます。同法人が未来を見据えて実践するICT・介護ロボットの活用、国内外での人材育成、他法人との連携の取り組みについて取材しました。


時代のニーズを先取りして地域に貢献


 青森県むつ市にある社会福祉法人青森社会福祉振興団は、昭和49年の設立以来「創意と工夫 努力と情熱」という法人理念のもと、時代や地域のニーズに対応した快適な介護環境をつくるため、対話から生まれる創造的な介護の在り方を追求してきた。
 法人施設は、むつ市において特別養護老人ホーム2カ所、ケアハウス、グループホーム、デイサービスセンター、クリニック、訪問介護、訪問看護ステーション、リハビリセンターなどを運営している。同法人がこれまで地域で担ってきた役割について、理事長の中山辰巳氏は次のように語る。
 「社会福祉法人として地域の役に立ち、その時代のニーズを先取りして求めに応じていくことを大切にしてきました。例えば、運営する訪問看護ステーションは介護保険制度が始まる1年前に開設しましたが、ヘルパー事業を実施するなかで、どうしても医療的な処置を必要とする利用者が多く、ヘルパーでは対応ができず、本人を含めた利用者家族から『なんとかしてほしい』という要望があったことがきっかけでした。当時は介護保険制度が始まる前で、医師会の合意を得る必要がありましたが、難色を示されながらも利用者・家族の要望に応えるために立ち上げました」(以下、「 」内は中山理事長の説明)。


ICT・介護ロボットの積極的な活用


 同法人は、未来を見据えた社会福祉の実践に向け、ICT・介護ロボットの活用、国内外での人材育成、他法人との連携に取り組んでいる。
 約40年前から科学的根拠やデータに基づく介護の実現のための取り組みを開始しており、財務や経理のOA化、排泄記録のデータ化、介護記録・請求の一元化管理システム「ちょうじゅ」を導入。さらに、「未来プロジェクト」として、ICT・介護ロボットを活用したサービスの質を保持する取り組みを強化し、「ipad」や「ipodtouch」などのタブレットをはじめ、見守りシステム「A.I.Viewlife」、医療・福祉専用のシフト自動作成ソフト「びっくりシフトさん」、天井走行リフト、事故対策カメラなどを導入している。
 「タブレットの導入により、記録システムを連動させることで、どこでも介護記録などの入力が可能となり、職員は常に利用者を見守り、寄り添うことができるようになりました。また、見守りシステムは、広角IRセンサーにより、居室全体を対象にした危険予兆動作を検知し、職員が所持するモバイル端末にプライバシー配慮したシルエット画像が通知され、就寝中の生体反応を常時確認するセンサーも備えているため、早急な状況把握が可能となっています」。
 また、事故対策カメラを導入することで、利用者の転倒事故などが起きた際にも推測ではなく、映像を確認して具体的な対策を立てることができ、職員研修の際にもリアルな事例として活用しているという。


▲ タブレットと記録システムを連携させることで、どこでも介護記録が入力でき、常に利用者を見守り、寄り添うことが可能に ▲ 特養の居室には天井走行リフトを設置し、移動介助する際の利用者の身体的な負担軽減と職員の腰痛予防につながっている

人材確保・育成の取り組み


 人材確保に向けた福利厚生の取り組みでは、託児ルームや職員寮のほか、職員向けの奨学金、資格取得や出産祝い金などの制度を導入している。
 教育制度では、新人職員の指導・教育を先輩職員が行うチューターシステムを取り入れ、ステップにあわせた研修を実施しているほか、介護・看護などの専門職が講師となり、専門分野に特化した研修会「フューチャー寺子屋」や、中山理事長が講師を務める「未来塾」などを行っている。
 「『未来塾』は、一般職員を対象にした任意参加の研修会として毎月開催しているもので、職員の人材育成と奨学金制度を兼ねています。社会的なテーマを取り上げた講義を行い、受講後にレポート提出があります。修了した職員に対しては、1回当たり1万円、年間12万円の奨学金を年度末に支給しており、書籍の購入等勉強や自分を磨くことに役立ててもらうことを目的としています」。
 また、専門スキルの向上に継続して取り組む習慣を身につけるため、法人独自の職員段位評価制度「わいスター制度」を導入。全職員を対象に筆記と実技試験により職員のレベルを4段階で評価している。この評価は昇級・昇進に反映され、自分に足りない知識、技術がわかり、どうすれば次のステップに進めるのかが明確化されているため、職員の意欲の向上につながっているという。
 外国人介護人材の活用にも力を入れ、平成20年からEPA介護福祉士候補者、平成29年から技能実習生の受け入れを開始している。これまでにEPA候補者は19人を受け入れ、手厚い日本語教育やサポートにより、国家試験の合格率100%を実現している。
 さらに、平成26年にはベトナムにフエ事業所を開設しており、国立フエ医科薬科大学、省立フエ医療短期大学、国立フエ中央病院とそれぞれ協働事業覚書を締結して日本語や高齢者介護に関する理論や技術の教育を行っている。
 「EPAの受け入れを開始した当時は、いまほど日本人の介護人材が不足していたわけではなく、国際貢献とともに世界的な視野を広げることが目的でした。ただ、将来的には介護人材の労働力が枯渇することがみえていましたので、海外に拠点を設けて日本式介護のノウハウを提供していくとともに、人材確保が厳しいときには助けてもらいながら、互いに支えあう仕組みがつくれないかと考えました。介護技術を身に付けたベトナム人のなかには、来日してむつ市の事業所で働いていたり、ベトナムの介護現場等で働く人もいます。令和4年5月には、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期になっていたフエ短大の第1期生5人が来日しています」。


▲ 中山理事長が講師を務める「未来塾」では、修了者に奨学金を支給して職員が勉強や自分を磨くことに活用されている ▲ ベトナムに開設した「フエ事業所」。大学や病院と協働して日本語や高齢者介護に関する理論や技術の教育を行っている

社福5法人で協同組合を設立


 他法人との連携としては、平成31年4月に特定技能での外国人の受け入れを目的に、中山理事長の呼びかけにより、東北地方を中心とする社会福祉法人5法人で「みちのく社会福祉協同組合」を設立した。
 協同組合は、外国人介護人材の受け入れを目的とするほか、スケールメリットを活かした物品の共同購入や職員研修を実施している。共同購入にはおむつや介護ベッド、車いすのほか、電気料金なども含まれ、全体の購入費用が前年同月比で3割減少する効果が出ているという。
 「今後の介護報酬の動向や人材不足、介護需要の減少などの状況からみても、社会福祉法人が単独で生き残っていくことは難しくなっています。設立した協同組合では、同じような課題を共有している社会福祉法人が参加しているため、本音でさまざまな意見やアイデアを出しあうことができ、介護人材の確保もさることながら、運営にも大きなメリットが出ていることを実感しています」。
 協同組合の取り組みの一つに、令和2年から実施している「安眠プロジェクト」がある。同プロジェクトは、ICTの活用により、夜勤帯の安否確認や体位変換を減らすことで入居者の安眠と職員の負担軽減につなげることを目的に、同法人が導入する見守りシステムと自動体位変換マット「ここちあ利楽flow」を使用し、協同組合の4法人とメーカーで実地検証を行った。
 「自動体位変換マットは、体重設定から体位変換、姿勢保持までを全自動で行うエアマットレスで褥瘡予防ができる機種となっています。褥瘡ができやすい利用者は2時間ごとに体位変換が必要になりますが、体位変換や見守りシステムにより職員の訪室する回数を減らすことで、利用者は睡眠を妨げられることがなくなり、職員の負担軽減にもつながっています。職員の感覚としては、これまでの夜勤の半分くらいの労力でケアの質は向上しており、ある利用者からは『何年ぶりかでぐっすり眠ることができた』という感想がありました」。


令和4年6月に特養「まるめろ」を開設に


 同法人は、令和4年6月に宮城県仙台市において、法人では3カ所目の特養となる特別養護老人ホーム「まるめろ」を開設した。
 ユニット型特養である同施設の定員は80人で、これまでむつ市で培ってきた介護実践の集大成として、ICT・介護ロボットを駆使し、感染症対策を整備した施設となっている。建物は木の温もりがあふれる木造2階建てで、屋上には災害時に地域住民の避難場所として活用できる広いスペースを確保した。
 なお、併設する訪問介護、訪問看護、居宅介護支援事業所は、近隣施設との連携体制を構築するため、平成30年から先行して運営を開始している。
 施設の特徴として、「福祉と文化の融合」を目指し、地域交流ホールや図書館、美術館、シアタールームのほか、入居者だけでなく地域住民が利用できるギャラリーホールを設置した。ギャリーホールは、さまざまなイベントに活用できるカフェやレストランを併設し、地域住民の憩いの場になることを目指している。
 感染対策としては、職種・エリアごとの通用口を設け、感染流行下においても適切なゾーニングのもとでケアを持続できる環境をつくった。さらに、最新の換気機能付き空調システムや非接触自動ドア、自動手洗い・うがい器、陰圧室などの設備を備える。
 ICT・介護ロボットの活用では、全居室に見守りシステム、自動体位変換マット、天井走行リフトを設置するほか、安心・安全で美味しい食事を提供するため、ICT調理システムを導入した。
 「簡単にいうと、冷凍ではなく冷蔵の食品をマイクロ波で加熱するシステムで、これまでと大きく違うのは水分が飛ばないため、みずみずしく美味しい食事を提供することができます。例えば、お膳に盛り付けた食事の副菜だけを温めるスポット加熱の機能があり、お膳ごと温めることができるため、非常に効率的です。介護人材と同様に調理員の確保も厳しいなか、このシステムを導入することで80人分の食事を職員2人で対応することが可能となっています」。


▲▼ 「まるめろ」の居室(個室)と共同生活スペース ▲ 令和4年6月に仙台市に開設した特養「まるめろ」

▲ 施設内には広々とした地域交流ホールを設置

▲ 感染対策として、陰圧室や最新の換気機能付き空調システムのほか、各ユニットの入口などに非接触自動ドアを設置

今後は仙台市での事業展開を計画


 今後の展望としては、むつ市にある施設・事業所の運営を継続しながら、数年以内に本部機能を仙台市に移すことを計画しているという。
 「全国的に介護人材が不足するなか、本州の最北端に位置するむつ市では新卒者の採用だけでなく、介護福祉士の資格をもつ人は皆無に等しく、非常に厳しい状況にあります。高齢化による人口減少などにより介護需要の減少が見込まれるなか、新たに仙台市を拠点に事業展開していくことを計画しています」。
 未来志向の社会福祉を実践するため、ICT・介護ロボットの活用、国内外の人材育成、他法人との連携を進める同法人の今後の取り組みが注目される。


新たなサービスを創出して独自財源を確保
社会福祉法人青森社会福祉振興団
理事長 中山 辰巳氏
 今回、初めて仙台市に特養を開設しましたが、もう一つの拠点をつくることで地域ニーズなどの情報の集約や交流を含め、多角的な経営が可能になると考えています。職員にとっても複数の拠点があることは、職場を選択できたり、ポストを作る意味でも大事なことだと思います。
 また、今後の介護保険財政を考えると、介護報酬だけに頼るのではなく、介護保険以外で高齢者にとって役立つサービスを創出するなど、独自の財源をつくらなければならない時代になると思います。そのため、新たに開設した特養には従来の相談員とは別に、コンシェルジュを配置し、「このようなサービスがほしい」といった利用者の声やさまざまな要望を集約して、新しいサービスを創出していくきっかけにしたいと考えます。


<< 施設概要 >>令和4年6月現在
理事長 中山 辰巳 法人設立 昭和49年
法人施設 特別養護老人ホーム「みちのく荘」、「金谷みちのく荘」、「まるめろ」/ケアハウス「みちのくグリーンリブ」/グループホーム「まるめろ」/みちのく訪問介護ステーション/みちのくクリニック/みちのく訪問看護ステーション/みちのく訪問リハビリテーションセンター/みちのく金谷リハビリテーションセンター
海外事業部 ベトナム・フエ事業所
住所 〒035-0067 青森県むつ市十二林11−13
TEL 0175−23−1600 FAX 0175−23−1601
URL https://www.michinokuso.jp/


■ この記事は月刊誌「WAM」2022年7月号に掲載されたものを一部改変して掲載しています。
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