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山口県宇部市・社会福祉法人むべの里光栄

2つの社会福祉法人が合併、地域に根ざした法人運営を実施

 山口県宇部市にある社会福祉法人むべの里光栄は、経営基盤の強化や事業の効率化、人材確保、地域ニーズに対応するため、令和3年4月に2つの社会福祉法人(むべの里・光栄会)が合併した法人です。合併に至るまでの経緯や合併後の状況、取り組みについて取材しました。


地域ニーズに対応した多様な事業を展開


 平成7年に設立した社会福祉法人むべの里は、「住民こそ主人公」という法人理念のもと、人権擁護と誰もが安心して暮らせるまちづくり、それらを担う人材の育成と働きがいのある職場づくりに取り組んできた。
 宇部市を中心に、介護事業では複数の特別養護老人ホームをはじめ、養護老人ホーム、ケアハウス、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、認知症グループホーム、訪問介護、通所介護事業所などを運営。障害福祉事業では、グループホーム、就労継続支援A型・B型事業所、相談支援事業所のほか、診療所を運営しており、地域ニーズに対応した多様な事業を展開している。
 同法人は、社会福祉法人として時代のニーズを先取りして応じていくことを大切にし、設立当初から近隣住宅への訪問により地域の困りごとや潜在しているニーズを聞き取り、地域での暮らしを支えるサービスの拡充に取り組んできた。
 具体的には配食サービス事業や24時間対応のヘルパー事業を地域で先駆けて立ち上げたほか、グループホームは介護保険制度が始まる1年前に県のパイロット事業として運営を開始している。
 さらに、地域に根ざした法人運営を行うなかで、職員が主体的に企画した地域向けイベント等を毎週開催し、多くの地域住民が施設を訪れることが日常的になっているという。
 そして、令和3年4月、社会福祉法人光栄会と合併し、新たに「むべの里光栄」として地域に根ざした高齢者介護・障害福祉サービスを展開することとなった。


合併により経営基盤を強化し、地域ニーズに対応


 法人合併を行った経緯について、旧むべの里理事長であり、現在はむべの里光栄の理事長である隅田典代氏は次のように説明する。
 「私自身が法人合併を視野に入れ始めたのは、平成28年の社会福祉法改正で合併や事業譲渡に関する規定が追加され、令和2年に社会福祉法人の事業展開に係るガイドラインが示されたことがきっかけでした。社会福祉法人の責務が位置づけられ、経営基盤の強化や事業の効率化、人材確保、地域ニーズへ対応していくためにも、合併という手法により法人の大規模化の必要性を感じていました。
 そのようななか、当法人と同様に宇部市を拠点に介護事業と障害福祉事業を展開している光栄会から『現在の経営状況では将来的な展望が描けないため、合併を一緒に考えてほしい』という申し出を受け、吸収合併という形で協議を進めることになりました。昭和32年に設立された光栄会は、むべの里より歴史があり、とくに知的障害者の就労支援において県内でもパイオニア的な存在でした。平成13年ごろに法人の存続が危ぶまれた際、当法人の役員が経営の立て直しに関わり、その後、役員や評議員を互いに出しあったり、職員研修を共同で開催するなど、協力法人として近い関係にありました」(以下「」内は隅田理事長の説明)。


▲ 特別養護老人ホームむべの里をはじめ、地域ニーズに応じた多様な高齢者介護・障害福祉事業を展開

▲ 地域に根ざした法人運営を行い、職員が主体的に企画した地域に向けたイベントを定期的に開催している


事前協議から合併に至るまでの過程


 法人合併に至るまでの過程としては、令和2年8月に合併協議の開始に向けた事前協議を経て、設置した協議会で合併の時期や進め方などについて議論を行った。9月末には山口県の担当者との事前協議を行い、法人合併の意義やスケジュール、手続きなどについて確認。その後、両法人の理事会、評議員会を開催して合併に係る秘密保持契約、基本合意書、合併契約書について承認を得た。10月下旬には法人合併認可申請書、定款変更認可申請書の提出、11月初旬には両法人の全職員に対して合併の説明を行った。
 令和3年1月5日に法人合併が認可され、合併公告を経て、両法人で理事会・評議員会を開催し、合併後の事業計画、新年度の予算などの承認を受けた。4月1日に社会福祉法人「むべの里光栄」としての合併登記と光栄会の解散登記を行い、6月25日に新役員会、新評議員会を発足して現在に至っている。
 「もともと、光栄会側から申し出があったこともあり、協議会での議論はスムーズに進めることができました。その一方で、書類作成や手続きなどの実務面に関しては、提出書類が非常に多く、両法人がすべて同じタイミングで提出しなければならなかったことから、その点は苦労しました。さらに、今回の合併のように介護事業、障害福祉事業といった別制度の事業を運営している場合、同じことをするのでも書類の量が異なり、大きな手間になってしまいます。そのためにも、行政としっかり交渉しながら書類を作成することのできる人材を実務担当者とし、法人の風土が異なることをよく理解したうえで、もし両法人の実務面の力量において差がある場合は、どちらかが主導して進めていくことが必要だと感じました。



会計管理と賃金規定の対応


 合併時の対応として、会計管理については、令和3年度決算から会計処理をあわせなくては令和4年度の期首数字に影響するため、令和3年度から「むべの里」で導入する会計ソフトと会計処理方法へ統一した。その一方で、就業規則と賃金規定については、令和3年度はそれぞれの法人の2本立てとし、翌年度から旧光栄会の職員の基本給が前提となる給与表以外を統一し、5年後にすべて一本化する予定としている。
 「賃金規定の設定で難しいのは、給与表だけでなく、両法人で職員の労働時間や支給時期、さまざまな諸手当などが異なることがあります。例えば、むべの里の職員1人当たりの年間労働時間は2,083時間であるのに対し、光栄会はそれよりも200時間少ないという現状がありました。そのため、光栄会の職員に対しては労働時間が200時間増える分、賃金規定をすべて統一する5年後まで年度初めに毎年20万円を支給しており、むべの里の職員に対しては合併報奨金という名目で同額を支給することで対応しています」。
 合併後の状況としては、職員数は約1,300人と、県内で最大規模の社会福祉法人となった。基本的に職員はこれまで所属していた施設・事業所で業務を行い、翌年度から旧法人間を超えた管理者クラスの異動を行っている。
 「合併後1年間で、旧光栄会の職員100人近くが退職して、そのうち60人が常勤職員でしたが、もともと職員配置が過剰なところがあり、そのことが経営を圧迫する要因の一つとなっていました。非常勤を採用することもありましたが、基本的には退職後も常勤職員を補充することなく、事業を運営することができています。これにより人件費は2億円ほどの削減効果がありました。また、旧むべの里で導入していたセントラルキッチン*を旧光栄会の施設・事業所でも取り入れることで、給食費にかかる金額も8,000万円ほど削減することができています」

*セントラルキッチン…介護施設など複数の施設の料理を1カ所で調理する施設

法人風土の違いを乗り越え団結させる取り組み


 さらに、合併後10年間の目標として、事業規模で「100億円、全国トップ10を目指す」という数値目標を示したスローガンを掲げ、職員の待遇改善、地域貢献、福祉サービスの充実を図る事業計画・戦略を策定した。
 これら目標の実現に向け、隅田理事長は「組織の成長=人の成長」と考え、法人トップとして法人風土の違いを乗り越え、前向きに団結させることに取り組んできた。
 具体的には、各事業所でランチミーティングを毎月開催し、隅田理事長自らが法人理念や経営方針、社会情勢などについて伝えたり、これまでに100人を超える事業管理者・リーダークラスとの面談を通じて、職員の理解と納得を得るために尽力しているという。 
 また、合併後は事業所の転換や支援ニーズにあわせた適切な運営を行い、新たな収入源を生み出している。
 「具体的には、稼働率のそれほど高くないショートステイを、有料老人ホームに転換しており、配置人数が少なくなる分、人員を必要とする事業所に配置することができています。そのほかにも、旧光栄会は、地域で唯一の児童発達支援センターの指定管理を受けていましたが、来所する相談者だけでなく、自分たちから地域に出向いて発達障害をはじめとする子育ての困りごとを発掘することにより、相談件数が増加するとともに、活動の幅も広がっています」。
 さらに、同法人は令和3年4月に有料老人ホームとデイサービスセンター、障害者の就労支援事業所を併設する多世代共生施設「輝きの里」を開設している。同施設の敷地面積は2万uあり、敷地内には就労支援事業所の利用者が働く農園やレストランのほか、地域住民が利用できる多目的広場などを設置し、地域交流の拠点となっている。


← 令和3年4月に開設した多世代共生施設「輝きの里」。有料老人ホームやデイサービス、就労支援事業所、多目的広場、レストランなどを併設


▲ 「輝きの里」は、地域で暮らす家族や高齢者、障害者が集う交流拠点となっている

 令和5年度には「輝きの里」と同様に3万uの広大な敷地内に就労支援事業所と大規模な農地や公園を整備した「夢の里」を開設する予定となっている。
 新設する就労支援事業所では、主に椎茸栽培を行う予定で、近年主に海外で流行している動物性の食品を摂取しないヴィーガン向けに就労支援の活動のなかで干し椎茸に加工して海外に輸出していくことを考えているという。


法人規模が拡大するなか、幹部職員の育成が課題に


 今後の展望として、経営基盤の強化や事業効率の向上、人材確保、地域ニーズに対応するためにも、他法人からの事業譲渡を含め、さらなる法人の大規模化を視野に入れているという。
 「宇部市は人口約16万人で、2040年くらいまで高齢者が増加して介護需要は減少しないことが推計されていますが、多くの介護事業所があり、日本でも有数の競合地域といわれています。生産人口が減少しているなか、人材確保は非常に厳しくなっており、今後は介護事業所の廃止や事業譲渡という話も出てくるのではないかと思っています。当法人としては医療面を強化していくためにも、訪問看護などの譲渡の提案があれば、前向きに考えていきたいと思います。一方、現在の課題としては、法人規模が拡大するなかで法人理念を実現できる幹部職員の育成が急務となっています」。
 合併により経営基盤を強化し、地域に根ざした法人運営を行う同法人の今後の取り組みが注目される。


職員の理解と納得を得るための努力が必要
社会福祉法人むべの里光栄
理事長 隅田 典代氏
 法人の風土が異なるなかで、その風土を乗り越えて前向きに団結させるためには、理念や方針などを職員に理解してもらい、納得を得るための努力が必要となります。わかりやすい数値目標を示さなければ伝わりにくいですし、可能な限り現場に出向いて職員に説明することに取り組んできました。
 合併したことにより、新たな業務を任されたり、管理者に抜擢された旧光栄会の職員も少なくありませんが、職員から「漠然とした不安や戸惑いがありましたが、目標や指導が明確になり合併してよかった」という声が寄せられていることは私自身もうれしく思っています。



<< 施設概要 >>令和4年10月現在
理事長 隅田 典代 法人設立 平成7年
職員数 約1,300人(非常勤を含む)
法人施設 【介護事業】 特別養護老人ホーム5カ所/養護老人ホーム/生活支援ハウス/ケアハウス2カ所/サービス付き高齢者向け住宅6カ所/有料老人ホーム12カ所/グループホーム4カ所/デイサービス21カ所/共生型デイサービス2カ所/訪問介護事業所13カ所/居宅介護支援事業所12カ所/地域包括支援センター2カ所
【障害福祉事業】 グループホーム13カ所/障害者支援施設2カ所/生活介護4カ所/放課後等デイサービス2カ所/児童発達支援センター/相談支援センター2カ所/就労継続支援事業所2カ所(A型・B型)
【医療事業】 診療所
住所 〒759−0206 山口県宇部市東須恵字大浴320−1
TEL 0836−45−1100 FAX 0836−43−1889
URL https://www.mubekouei.com


■ この記事は月刊誌「WAM」2022年11月号に掲載されたものを一部改変して掲載しています。
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