サービス取組み事例紹介
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▲ 施設の外観 |
地域ニーズに応えた介護・保育事業を展開
昭和54年に設立された社会福祉法人晋栄福祉会は、「DO FOR OTHERS」(他者への貢献)という法人理念のもと、地域の介護・保育ニーズに応えた多様な事業を展開している。
法人の沿革としては、地域の保育施設が不足しているというニーズを受け、法人本部のある大阪府門真市に保育園を開設したことに始まる。現在は、大阪エリア、兵庫・神戸エリア、奈良エリアにおいて、介護事業では特別養護老人ホームや認知症グループホーム、ケアハウス、デイサービス、訪問介護、小規模多機能型居宅介護など、保育事業では認定こども園、保育園(所)、地域子育て支援センター、放課後児童クラブなどを運営。法人全体の事業所数は46カ所にのぼる。
さらに、令和6年4月には地域における障害児支援の中核的な役割を担う「門真市立こども発達支援センター」の民営化にあたって、同法人を含む社会福祉法人3法人が指定管理者として採択され、障害のあるこどもたちのライフステージに沿った、切れ目のない一貫した支援体制の構築に取り組んでいる。
グループホーム「高山ちどり」を開設
同法人は、令和5年3月に奈良県生駒市の公募事業の採択を受け、認知症グループホーム「高山ちどり」を開設した。
認知症グループホームの開設経緯について、理事長のM田和則氏は次のように説明する。
「生駒市は県内でも3番目に高齢者人口が多い地域である一方、受け皿となる介護施設は十分に整備されていない状況がありました。今後はさらに認知症高齢者の増加が予測されるなか、地域のニーズに応えたいという想いがありました。また、開設地の同一敷地内には、平成20年に開設した特養『高山ちどり』があり、ショートステイやデイサービス、居宅介護支援事業所を併設していました。さらに、平成31年には地域の入所ニーズに対応するため、特養『高山ちどり別館』を開設することにより、特養の入所定員はあわせて100人に拡大しました。地域のニーズに応えるとともに、同一敷地内に特養を運営しているスケールメリットを活かしながら、認知症高齢者の身体状態に応じたケアの提供や特養への住み替えにも対応することにより、利用者が住み慣れた地域で暮らし続けられるようサポートしています」。
開設地は、豊かな自然に囲まれた環境にありながら、近鉄けいはんな線「学研北生駒駅」から徒歩10分と好立地にある。近隣にはスーパーやホームセンター、レストラン・カフェなどがある利便性が高い地域となっており、利用者の家族が頻繁に面会に訪れる環境があるという。
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▲ 敷地内には、2 カ所の特養を併設し、重度となったグループホームの利用者の住み替えに対応している | ▲ 感染症対策として生活空間と切り離した面会室を設置 |
同一敷地内の特養と連携を図る
グループホーム「高山ちどり」の建物は、木造2階建てで1ユニット9人×2ユニットの定員18人となっている。施設設計では、パナソニック社が独自開発した「テクノストラクチャー工法」を採用し、木造建築でありながら、耐震性能が高く、建築コストについても大幅に抑えることを実現した。
施設設計の特色や実践する取り組みについて、グループホーム「高山ちどり」管理者の成田保則氏は次のように説明する。
「当施設のある生駒市高山町は、『茶筅(ちゃせん)』の町として知られ、施設内の天井は木目にするなど、和風を意識したデザインを取り入れていることが特徴となっています。利用者にゆっくりと過ごしてもらうため、広いリビングを設けたほか、各居室やトイレの扉を色分けし、利用者が自分で判別して行動できるよう工夫しています。また、認知症をもつ利用者の視点を重視し、一人ひとりの個性に応じた活動に取り組んでおり、健康促進に向けた菜園活動や買い物、施設訪問などの外出支援に力を入れ、当法人が運営する保育園のこどもたちとの交流活動も定期的に行っています」。
同一敷地内に多様な介護施設を運営するスケールメリットや効果としては、物品の共同購入をはじめ、医療が必要な際に特養に併設する診療所で診察を受けることができ、特養にとどまらず、グループホームの利用者に対してターミナルケアや看取りに対応することが可能となっている。
「住み替えの事例として、ご夫婦で入所施設を探していたケースでは、ご主人が特養に入所し、奥さんは要介護度が軽度のため、グループホームに入所していたところ、ご主人が看取り期に入り、奥さんのそばで最期を迎えさせたいという家族からの希望があり、特養からグループホームに移っていただき、看取ったケースがあります。このようにご家族の希望に応えられるのも、併設する特養や診療所と連携し、医療の提供や住み替えに対応できることが大きくなっています」(成田氏)。
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▲ グループホーム「高山ちどり」の居室とリビング・キッチン | |
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▲ 各階の廊下の天井は木目にするなど、施設全体で和風を意識したデザインを取り入れている | ▲ 敷地内に菜園をつくり、利用者が季節の野菜を栽培することに取り組んでいる |
法人全体で外国人介護職員の雇用を推進
法人全体の取り組みとして、同法人では長期的に安定して介護サービスを提供することを目指し、外国人介護職員の積極的な雇用を推進している。令和6年7月現在で160人の外国人職員が在籍しており、在留資格別の配属者数は、在留資格「介護」86人、EPA介護福祉士4人、EPA介護福祉士候補者25人、特定技能38人、その他(永住者、定住者、日本人配偶者)7人となっている。
「平成21年に初めてEPA介護福祉士候補者の受け入れを開始したときは、国際貢献という意味あいが大きく、当時は養成校や一般的な求人で日本人の介護職員を確保することができていました。しかし、平成28年以降に介護施設を立て続けに開設したところ、人材確保が大きな問題となり、外国人介護職員を積極的に受け入れる方針としました。そこで、介護施設の新設については、3分の1は従来通りの求人で日本人職員を採用し、3分の1は法人内の人事異動、残りの3分1は外国人職員を活用することを考えました。ただ、当時は特定技能がなく、新設の介護施設に外国人職員を配置することができなかったため、既存施設で外国人職員を採用し、日本人職員が異動しやすい環境をつくりました」(M田理事長)。
現在、同法人の介護部門に所属する職員数約1,000人のうち、外国人職員の割合は16%を占め、出身国別では、インドネシアの70人を中心に、フィリピン47人、ベトナム28人、ミャンマー8人、中国3人、ネパール2人、タイ、ブータン各1人と多様な国籍の職員が在籍している。
「外国人職員の働きぶりとしては、とくにインドネシア、フィリピン、ベトナムなどの国は大家族主義であり、高齢者に対して敬意と親しみをもって接してくれるため、利用者・家族、職員とのコミュニケーションも良好で、施設全体の雰囲気を明るくしてくれています。EPA候補者は介護福祉士の取得を目指して入国しているため、介護の仕事を学ぶ意欲が高く、日本人職員も触発されて、双方が刺激を受けています」(M田理事長)。
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▲ 令和6年7月現在、法人全体で160人の外国人職員が在籍 | ▲ 利用者のケアを行う外国人職員の様子 |
生活支援・学習支援の取り組み
外国人職員への支援体制では、各施設に外国人職員生活支援員を配置し、長年の受け入れノウハウを活かした細やかな支援を行っている。
支援内容としては、入国時の送迎をはじめ、家具・家電等を備えた居住環境の提供(UR賃貸住宅等と法人寮契約を締結)、公的手続きや各種ライフライン、携帯電話等の契約に関する同行支援、滞在家族への支援(母国からの呼び寄せの援助、保育所の情報提供等)、日本語・資格取得のための学習支援などを実施している。
外国人職員への配慮と学習支援の取り組みについて、「高山ちどり」外国人職員生活支援員の高橋光子氏は次のように説明する。
「外国人職員にとっていちばんの不安は日本語になります。主語をつけなかったり、日本特有の曖昧なニュアンスで話すと、混乱することが多いので、”やさしい日本語“で簡潔に伝えることを心がけています。母国の文化や習慣、宗教上の配慮をしながら生活の指導とサポートを行い、気軽に相談してもらえるような関係性をつくることに取り組んでいます。また、EPA候補者に対しては、日本語の習得と国家試験対策の講義を就業時間内に週4時間確保しています。国家試験直前の3年目の12〜1月には自習時間を含めて学習時間を週18時間に拡大し、試験に臨んでいただいています。そのほかにも、配属後は『介護職員初任者研修』とともに、介護福祉士国家試験の受験要件となる『介護福祉士実務者研修』の受講支援を行っています」。
さらに、外国人職員のキャリアアップにも取り組むことにより、ユニットのサブリーダーなどの役職者を務める外国人職員も複数施設で存在しており、外国人同士で指導することや働くモチベーションを高めることにもつながっているという。今後はさらに国籍、在留資格に関わらず、キャリアアップできる環境整備を進めていくとしている。
外国人職員の入職希望者が増加
近年、同法人では入職を希望する外国人介護福祉士から直接メールで応募があるケースが増え、登録支援機関や監理団体を活用せずに直接雇用することができているという。
「多くの外国人職員が集まる要因として、外国人向けの採用案内を充実させていることもありますが、やはり同じ出身国の職員が多く在籍していることで、コミュニケーションを図りながら、外国人同士で指導や相談できる環境があることが大きいと思います。働いている外国人職員が自分の家族や知り合いに当法人を紹介するケースも非常に多くなっています。また、文化や習慣に対して、可能な限り尊重する職場づくりをすることにより、イスラム教の方でジルバブ(頭に巻くスカーフ)を着用した業務が認められないために、他施設から当法人に転職を希望することもあります。多様性を認めあうために、日本人職員を対象にした研修を行い、それぞれの国民性や習慣を共有することにも取り組んでいます」(M田理事長)。
外国人職員を積極的に採用し、地域の福祉ニーズに応える同法人の今後の取り組みが注目される。
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▲ 外国人の入職希望者とオンライン面談を行う様子 | ▲ 特養内には外国人職員がお祈りに使用するスペースを設置 |
福祉専門職の養成が必要
社会福祉法人晋栄福祉会
理事長 M田 和則 氏
外国人人材の受け入れ効果としては、やはり人材確保がいちばんのメリットとなっています。どうしても職員が不足すると、職員一人当たりの業務負担が大きくなり、離職につながるという負のスパイラルに陥りますが、そうなる前に外国人職員を採用して人員を確保することができています。
また、介護職員にとどまらず、看護職員やケアマネジャーの確保も厳しくなっています。近年は閉鎖する養成校が増えていることもあり、今後は在籍している職員のなかで福祉専門職を養成していくことも必要になっています。
理事長 | M田 和則 | 病院開設 | 令和5 年3 月 |
入所定員 | 18 人 | ||
併設施設 | 「高山ちどり」(特別養護老人ホーム、ショートステイ、デイサービス、居宅介護支援)、「高山ちどり別館」(特別養護老人ホーム、ショートステイ) | ||
法人施設 | 【介護サービス】18 事業所/【保育サービス】27 事業所/【障害福祉サービス】1事業所 | ||
住所 | 〒630-0101 奈良県生駒市高山町8030 番地 | ||
TEL | 0743−70−1832 | FAX | 0743−71−2083 |
URL | https://www.chidori.or.jp |