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— 奈良県大和高田市 社会医療法人健生会 土庫病院 —

多角的支援で地域を守る、困りごとに寄り添う医療のかたち

奈良県大和高田市の土庫病院は安心して住み続けられるまちづくりを目指し、地域に根ざした医療を実践しています。地域で担う役割や法人合併の経緯について取材しました。

▲ 施設の外観

無差別・平等の医療提供を実践

 奈良県大和高田市にある社会医療法人健生会土庫病院(理事長:横山知司氏)は、「無差別・平等の医療、安全・安心で信頼される医療を実践します」という法人理念のもと、地域に根ざした医療を提供するとともに、安心して住み続けられるまちづくりに取り組んでいる。
 法人の沿革としては、昭和30年に同院の前身となる診療所を開設したことにはじまる。昭和34年に医療法人健生会を設立し、昭和40年に診療所の廃止に伴い、新たに30床の土庫病院を開設した。診療所の開設から70年以上にわたって地域医療を支え続けており、平成25年には社会医療法人の認可を受けている。
 法人施設は、大和高田市を中心に、土庫病院をはじめ、診療所(5カ所)、介護老人保健施設、看護小規模多機能型居宅介護、訪問看護、訪問介護、通所介護、居宅支援事業所を運営し、退院後に在宅療養を支える体制を整備している。
 土庫病院の病床数は199床で、その内訳は一般病床88床、地域包括ケア病床111床となっている。内科、小児科、大腸肛門科を中心に地域医療を支えるとともに、救急指定病院として積極的に救急患者の受け入れを行っている。
 同院が地域で担っている医療機能や役割について、院長の吉川周作氏は次のように説明する。
 「救急医療では『断らない医療』を合言葉に、対応できる疾患については24時間365日体制で受け入れ、救急搬送の受け入れ数は年間2,000件に達しています。また、中南和地域の小児二次救急輪番に参加するとともに、運営する『土庫こども診療所』や近隣の医療機関と連携し、小児の救急医療と入院医療にも対応しています。また、当法人が運営する医療施設では、経済的な理由により適切な医療が受けられない人に対して、無料低額診療事業を実施するとともに、個室を含めた病室の差額ベッド料を徴収しないことにより、法人理念に掲げる『無差別・平等の医療』を行っています」。


 ▲ 土庫病院の受付・待合室
 ▲ 同院は「無差別・平等の医療」を実践するため、個室を含めた病室の差額ベッド料を徴収していない

大腸・肛門疾患の専門治療に特化

 さらに、同院の大きな特色として、がん治療ができる大腸・肛門疾患の専門医療施設「大腸肛門病センター」を設置し、疾病予防から手術後の管理まで一貫した取り組みを行っている。
 年間の手術件数は、全身麻酔手術が約220例(うち大腸がんが約100例)、内視鏡的ポリープ切除術が約1,000例、肛門疾患の手術が約500例と、近畿でも屈指の実績を誇る。
 「潰瘍性大腸炎やクローン病などの難治性腸疾患は、専門的な治療ができる医療機関が少なく、患者数も増加し続けています。そのような状況下で診断から内科的治療、外科的治療、肛門病変まですべての領域を診察できる施設として県内外から患者を紹介されています。そのほかにも、上部消化器分野に力を入れ、年間約4,000件の内視鏡検査を行い、胃がんの早期発見につなげるとともに、早期の胃がんには内視鏡的粘膜下層剥離術を行っています」(吉川院長)。
 また、介護施設や居宅での療養を支えるため、訪問診療や訪問看護など医療と介護の連携を図り、地域包括ケアのなかで、地域密着型多機能病院としても総合診療を中心に活躍している。


 ▲ リハビリテーション室では、各専門職が連携して質の高いリハビリを提供

安心して住み続けられるまちづくりの取り組み

 安心して住み続けられるまちづくりに向けた活動としては、患者・家族や地域住民と「健生会友の会」を発足し、活動や受診しやすい病院づくりに取り組んでいる。
 「健生会友の会」の活動について、事務長の猪之良隆子氏は次のように説明する。
 「現在、当会には約9,000世帯が加入しており、当院と会員が協働して地域の商店街や施設などで健康測定や健康、生活に関する相談対応を行う『まちかど健康チェック』や、当院の専門職が疾病予防や健康、医療・福祉制度に関する講座や情報提供を行う『医療懇談会』を定期的に開催するとともに、健康づくりのイベント『健康まつり』を毎年開催しています。そのほかにも、受診の際に移動手段をもたない患者に対し、『友の会』の会員が自宅から病院までの送迎支援を行ってくれています」。
 さらに、地域の居場所づくりとして、こどもから高齢者まで地域の誰もが利用できる「おひさん食堂」を毎月開催し、法人職員とともに「友の会」の会員がボランティアで運営に携わっている。
 「おひさん食堂」では、地域の農家や飲食店、生協などから寄贈された食材を用いた食事を提供しており、毎回100人を超える利用があり、多世代交流の場としても地域に浸透しているという。また、地域のこども食堂と連携し、情報交換や子育て支援として年に数回、食材配布を行っている。
 そのほかにも、病気のこどもを預かることで共働きやひとり親家庭であっても保護者が安心して仕事を続けられる生活環境の支援として、同院に隣接する「土庫こども診療所」の敷地内に病児保育園「ぞうさんのおうち」を併設している。
 地域の小児科診療所に併設している病児保育園として安心感も高く、大和高田市以外にも近隣の10市町と提携しており、登録者数は2,500人を超え、多いときには月100人以上の利用があるという。現在も他市町村から連携の申し入れあるなど高いニーズがうかがえる。


 ▲ 「疾病予防の健康班会」では、健康に関する講座や介護予防教室などを開催  ▲ 毎年5月に開催する「健康まつり」には、毎回多くの地域住民が参加する
 ▲ 地域の居場所づくりとして「おひさん食堂」を毎月開催し、地域交流の場となっている  ▲ 隣接する「土庫こども診療所」の敷地内には病児保育園を併設しており、高いニーズがある

法人合併により医療機能と経営基盤を強化

 同法人は、令和7年5月に医療・介護サービスの機能や経営基盤を強化していくため、同じ奈良民主医療機関連合会に加盟する社会医療法人平和会、医療法人岡谷会と法人合併を実施している。
 法人合併を実施した経緯について、健生会本部・副専務理事の室田智郁氏は次のように説明する。
 「合併した2法人は、ともに奈良市を拠点とし、平和会は精神科病棟、一般急性期病棟、地域包括ケア病棟、緩和ケア病棟を有する『吉田病院』(312床)、岡谷会は地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟、緩和ケア病棟を有する『おかたに病院』(150床)を中心に、医療・介護サービスを展開していました。もともと2法人とも、我々と同じ『無差別・平等の医療』を理念に掲げ、経営問題について協議したり、専門職の交流などのつながりがありました。医療・福祉事業の経営が厳しくなることが予測されるなか、自分たちが実現したい医療を継続していくために、法人合併によって経営基盤と医師をはじめとする人材育成を強化することで合意しました。吸収合併ではなく、対等な立場の法人統合であり、社会医療法人健生会として権利義務を承継していますが、すべての事業はそのまま継続して、互いにもつ強みや経営ノウハウを共有しながら、経営改善を図ることを目的としています」。
 合併後の法人施設は、病院3カ所、診療所18カ所、介護老人保健施設2カ所、訪問看護事業所7カ所となり、介護事業所を含めると全55事業所に拡大している。
 法人合併にあたっては、賃金規定と就業規定を統一する作業で苦労したという。
 「やはり、各法人で職員の給与体系や労働条件は異なりますので、統一にあたっては1年以上かけて議論してきました。賃金規定では、旧法人の賃金水準を下回らないように、給与規定を統一し、賃金の底上げを図りました。ただ、それでも地域の他産業と比較して低く、事務職員などの採用も難しい状況にあったことから、給与水準についてはできる限り引き上げました。電子カルテは、3病院、18診療所をどこまで統一するかが課題ですが、投資規模も大きく、それぞれの電子カルテシステム導入の経過もあるので、段階的に統一を開始しています」(室田副専務理事)。


ノウハウを共有し、経営改善につなげる

 合併後の連携としては、3病院のうち2病院が奈良医療圏にあり、土庫病院だけ少し離れた場所に位置しているため、病院間の連携では奈良医療圏にある2病院での連携が進んでおり、人手が足りないときに互いに補いあうことがスムーズにできるようになっている。また、職員研修では、各法人が培ったノウハウを共有し、質の高い研修プログラムを構築することにつながっているという。
 「1法人のときは、運営する施設・事業所をあわせて経営管理を行っていましたが、現在は事業所が増えたことにより、病院、診療所、介護事業所ごとに経営管理を行うことができています。病院でいうと、病院事業部会を毎月開催し、互いにもつノウハウを共有したり、異なる視点で経営分析を行うことにより、経営改善につなげています」(室田副専務理事)。


 ▲ 左から副専務理事の室田智郁氏、事務長の猪之良隆子氏

基幹型臨床研修病院として積極的に研修医を受け入れる

 医療・介護スタッフの確保が全国的な課題となっているなか、同法人でも看護師をはじめ、すべての職種において人材確保が厳しい状況にあるという。その理由として、養成学校が定員割れし、学生が減少していることに加え、大阪、京都に隣接して最低賃金も100円近く低いことから県外で働くことを選ぶ人が多いという。
 「医師については、当院は基幹型臨床研修病院の指定を受け、積極的に研修医を受け入れており、中小規模病院の強みを活かした主治医研修に高いニーズがあります。研修医が多い大学病院などと異なり、なるべく1人の患者を任せ、入院から退院までバックアップを受けながら経験を積めることが人気で、ここ数年はフルマッチを達成しています。そのルートで医師の確保につながるケースもあります。また、近年は医療ロボットを導入していない施設は、とくに研修医や若手医師から魅力を感じてもらえなくなっていますが、当院でも今年1月に腹部手術支援ロボットの『Hugo』を導入しました。このような投資は医療の質を高めることだけでなく、医師の採用にも大きく影響しています」(吉川院長)。
 法人合併により経営基盤を強化し、地域に根ざした医療提供や安心して住み続けられるまちづくりを行う同法人の今後の取り組みが注目される。

安心して住み続けられるまちづくりを
社会医療法人健生会 土庫病院
院長 吉川 周作 氏

理事長  今後の展望としては、いかに経営を安定させていくかに尽きます。地域の高齢化が進行するなか、専門的な医療の提供とともに、高齢者医療にもしっかり対応し、外来から入院、リハビリ、在宅まで、切れ目のない医療・介護サービスを提供していくことが重要だと考えています。同時に人材の確保・定着が不可欠となります。
 今後も、患者家族や地域住民と協働して「友の会」の活動を活性化させることで、安心して住み続けられるまちづくりを進めていきたいと思います。




<< 施設概要 >>
理事長 横山 知司
院長 吉川 周作
病院開設 昭和30年
病床数 199床(一般病床88床、地域包括ケア病床111床)
診療科 内科、外科、消化器内科、整形外科、皮膚科、大腸肛門科、リハビリテーション科
法人施設 吉田病院(312床)、おかたに病院(150床)、診療所18カ所、介護老人保健施設2カ所、訪問看護7カ所、訪問介護6カ所、看護小規模多機能型居宅介護など 計55事業所
住所 〒635−0022 奈良県大和高田市日之出町12−3
URL https://kenseikai-nara.or.jp/dongo
TEL 0745−53−5471 FAX 0745−22−0517


■ この記事は月刊誌「WAM」2026年3月号に掲載されたものを一部変更して掲載しています。
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