福祉医療分野の制度・施策動向ウォッチ
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※【用語解説】重層的支援体制整備事業 各市町村が「包括的な支援体制の整備」を進めやすいように、国が普及を図っている政策パッケージ。「(1)相談支援(属性を問わない相談支援、多機関協働による支援、アウトリーチ等を通じた継続的支援)、(2)参加支援、(3)地域づくりに向けた支援」の一体的な実施を、一括の交付金で促進するもの。令和2年の社会福祉法改正で創設された(令和3年4月施行)。実施市町村は令和8年度中に585市町村となる見込み。 |
「頼れる身寄りがいない高齢者」の支援で新事業創設へ
無低事業として位置づけ、「多様な主体が参入することが重要」
「A頼れる身寄りがいない高齢者等への対応、成年後見制度の見直しへの対応」に関しては、そもそも「身寄り問題」も「成年後見制度の見直し」もまったく別々の課題であるところ、報告書案ではこれを「頼れる身寄りがいない高齢者等も、判断能力が不十分な人も、人生の最期まで安心して歳を重ね、自分らしく地域で自立した生活を送るためには、日常的な金銭管理支援、福祉サービス等の利用支援、入院・入所手続支援などの生活支援や、死後事務の支援が必要という点は共通している」として、一緒に取り扱うものとして整理。誰しもこれらの支援を受けることができるように、「新たな事業」の創設を求めている。
具体的には、現行の「福祉サービス利用援助事業」※を拡充・発展させて、(1)日常生活支援、(2)円滑な入院・入所の手続支援、(3)死後事務支援などを提供する新たな第二種社会福祉事業を社会福祉法に位置づけ、一定の公的関与のもと、社会福祉協議会や社会福祉法人等の多様な実施主体が事業を実施できるようにする、というもの。資力がなくとも利用が可能なように、利用者のうち一定割合以上が無料又は低額の料金で利用できる事業(無低事業)の枠組みを適用する。実施主体に制限は設けず、「多様な主体が参入することが重要」と記している。
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※【用語解説】福祉サービス利用援助事業 社会福祉協議会で実施されている現行の「日常生活自立支援事業」(略称:日自事業)と同義。認知症高齢者・知的障害者・精神障害者などで日常生活上の手続き等に不安がある人を対象に、福祉サービス利用等の手続き支援、日常的な金銭管理、重要書類の保管などを行う。「日常生活自立支援事業」は社会福祉協議会への国庫補助事業上の名称。「福祉サービス利用援助事業」は社会福祉法で規定される第二種社会福祉事業のひとつ。 |
創設される「新たな事業」の概要を以下にまとめた。
〇「新たな事業」の内容
対象者 |
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・判断能力が不十分な人や頼れる身寄りがいない高齢者等としている。地域で自立した生活をし続けるために、生活上の課題に関して支援を要する人 |
事業内容 |
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・判断能力が不十分な人や身寄りのない高齢者等に対する「日常生活支援」に加えて、 「入院・入所等の手続支援」と「死後事務の支援」の少なくとも一方を実施する |
利用料 |
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・原則として利用者負担とし、無料又は低額で利用できる要件に該当する人に対しては、利用料を減免する。ただし、葬儀・納骨・家財処分に係る費用の実費相当は負担 ・利用料は、各地の最低賃金や新たな事業の運営等を踏まえ、各実施主体において設定 |
実施主体 |
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・事業の実施主体に制限は設けない ・都道府県内の区域であまねく事業が実施されるようにするため、現行の日自事業と同様、都道府県社会福祉協議会・指定都市社会福祉協議会において、必要な事業を実施することが適当とされている |
チェック体制 |
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・第二種社会福祉事業として、実施主体は事業開始にあたって都道府県知事へ届出が必要都道府県知事は、必要に応じて事業経営の状況調査、制限、停止を行える。知事の命令に違反した場合は、罰則の適用もありうる ・「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(令和6年6月)」の遵守 ・新たな事業の実施主体が取り組むべきガイドラインの策定が検討されている |
「DWATの法制化」「人材確保への対応」など求める
「B社会福祉法人制度・社会福祉連携推進法人制度の在り方」に関しては、人口減少地域におけるサービス提供体制の確保のため、福祉ニーズが充足されず他の事業主体の参入も期待できない地域に限って、社会福祉連携推進法人も社会福祉事業を実施できるよう規制緩和する(現行では、経営支援、人材確保、物資供給、ノウハウ提供、貸付などの業務に限定)とともに、既存施設の土地・建物等の有効活用に向けた規制の見直しを行うよう提起している。
「C災害に備えた福祉的支援体制」に関しては、災害救助法改正(令和7年7月施行)により「災害時の福祉的支援」が法定化されたことを受け、災害派遣福祉チーム(DWAT)にかかる体制づくり等を進められるように、さらなる法制度の整備を求めた。
「D共同募金事業の在り方」に関しては、現行の「共同募金の配分を受けた者は、その配分を受けた後1年間は、その事業の経営に必要な資金を得るために寄附金を募集してはならない」という禁止規定について、撤廃を求めている。
「E介護人材の確保・育成・定着」に関しては、以下のような対応を行うよう求めている。
〇都道府県を設置主体とする「介護人材確保に関するプラットフォーム」の構築
〇介護助手の活用によるタスクシフト/シェアの推進
〇業務負担軽減と働きやすい環境づくりによる定着支援
〇介護職チームを適切に機能させる「中核的介護人材」の確保・育成
〇幅広い専門性取得への道を広げる国家試験受験資格等にかかる見直し
〇介護福祉士届出制度の対象を現任者に拡大、キャリア形成支援
〇小規模法人を対象とした外国人介護人材の確保・定着にかかるサポート
委員からは、身寄り関連の「新たな事業」に“十分な財源”を求める声
以上のような報告書案に対して、部会では、発言者全員が「異論なし」の意を表明し、とりまとめは一部修正への対応を残して座長預かりとされた(とりまとめ後の報告書は令和7年12月18日付で公表済)。
委員の個別のコメントとしては、報告書案@の「包括的な支援体制整備」に関して、「市町村と国の信頼関係のもとで取り組みを進めることが重要。マニュアル作成にあたっては、実務者協議のような場を設けて、対話を通じて作りあげるプロセスをとっていただきたい」といった意見が出されたほか、Aの「頼れる身寄りがいない高齢者等への対応」に関して、現行の日自事業における財源不足や人員ひっ迫等の苦しい状況を訴えて「新たな事業」に“十分な対応”がとられるよう要請が相次いだ。
このほか、Eの介護人材の確保・育成・定着に関して、「ソーシャルワークを土台として、その上で保育や介護に必要なスキルを学ぶスタイルが理想。限られた福祉人材を横断的に有効活用できるように、仕組みの改善をお願いしたい」といった意見が出された。
社会・援護局長「地域共生社会は“今後100年の礎”」
厚生労働省の鹿沼均社会・援護局長は、閉会にあたっての挨拶で、「人口減少や単身高齢世帯の増加が今後さらに進むなか、地域共生社会実現に向けての取り組みは“今後100年の礎”となる重要施策だ」とコメント。「その認識のもとに、制度改正に向けて報告書の中身を整理し、『誰も取り残されることなく、地域で支え合う社会を目指す地域共生社会』の更なる深化に取り組んでまいりたい」と施策実現への決意を表明した。
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