人口減少・単身世帯の増加等の社会構造の変化を踏まえ、身寄りのない高齢者等への対応として、厚生労働省では日常生活支援、入院入所手続支援、死後事務支援等を提供する第二種社会福祉事業を新設する内容を含む、社会福祉法等の一部を改正する法律案を4月3日に国会へ提出しました。社会福祉法人としてできること、実際の対応等をみていきます。
制度・事業の範囲外の支援をせざるを得ない場面の解消に向けて
少子高齢化と人口減少、世帯や家族の規模の縮小(図1)、未婚率の上昇等に人々のつながりの希薄化という質的な変化が加わり、個人を支える支援資源はかつてより大きく減少している。さらに、高齢期については長寿化に伴い支援を必要とする可能性のある期間は延長しており、支える側であった若い世代の家族も高齢になるという意味でも、支援資源は減少している。
また、地域の相互扶助や家族同士の助けあいを補完・代替するものとして公的支援制度が整備されてきた一方で、身寄りのないこと(近くに支援を提供する親族がいない)自体はそれまでリスクとして大きくとらえられておらず、その結果として、例えば保証人がいないために入院や入所等が円滑にできない、空き家や無縁遺骨といった死後の問題が顕在化してきている(図2)。
こうした身寄りのない高齢者等の生活上の課題については、生活困窮者自立支援制度の自立相談支援機関、地域包括支援センター、社会福祉協議会が行う日常生活自立支援事業(日自事業/前身は1999(平成11)年開始の地域福祉権利擁護事業/図3)等で対応されてきたが、公的制度や事業が利用できない場合や制度・事業の範囲外の支援が必要な場合は、何らかのきっかけで関わりをもったケアマネジャー、医療機関のスタッフ、生活保護のケースワーカー等が業務外かつ無償の支援を提供せざるを得ない場合があることが指摘されてきた。
また、高齢者等終身サポート事業などの民間事業者が契約に基づいて支援することもあるが、契約の複雑さや倒産のリスク等、消費者問題となる危険性についても以前から指摘されている。
さらに、判断能力が不十分であることにより法律行為における意思決定が困難な人向けに成年後見制度もあるが、身上保護よりも財産管理のみが重視され利用者本人のニーズにあわないケースや、法定後見では終了原因が限定されていること等により課題が解決した後も制度利用を止めることができないケースもあること等が指摘されており、制度の見直しが進められているところである
なお、「身寄りのない高齢者等への支援に関する実態把握調査」(令和5年度厚生労働省老人保健健康増進等事業/身寄りのない高齢者の生活上の多様なニーズ・諸課題等の実態把握調査報告書の一部/2024(令和6)年3月)では、自治体・社会福祉協議会・民間事業者を対象に、共通の想定事例(生活支援、入退院、転居、死後対応)に基づいた各場面について、「このような場面の支援は実施しない」と回答した割合を示している(図4)。これはいわば支援の守備範囲の現状を反映したものといえる。
事業者は身元保証等高齢者サポート事業者として本人と契約していたり、自立相談支援事業や居住支援事業のなかで本人と接点をもつため、実施しないと答えた場面は全般的に少ない結果となっている。自治体は、他の主体と比較すると、多くの場面について支援を実施しないと回答した割合が高かった。ただし介護保険の利用に関連する場面や、死亡届や火葬許可書といった公的手続きに関連する場面、また転居先の検討場面ではその割合は低くなっている。社会福祉協議会は、自治体と事業者の中間に位置している。
第二種社会福祉事業として新設
2023(令和5)年9〜12月にかけて国で行われた「認知症と向き合う『幸齢社会』実現会議」においても、身寄りのない高齢者等の生活上の課題への対応がテーマの一つとなり、とりまとめでは「家族が全面的に支援することを前提としない意思決定支援の仕組みが必要。介護・医療従事者、身元保証事業者が意思決定支援に取り組んでいるものの、権限・主体が明確でない」と言及された。
その後、身寄りのない高齢者等への支援のあり方については、地域共生社会の在り方検討会議や社会保障審議会福祉部会等で議論が行われるとともに、「身寄りのない高齢者等が抱える生活上の課題に対応するためのモデル事業」が行われるなど、支援方法等が検討されてきた。
地域共生社会の在り方検討会議の中間とりまとめ(2025(令和7)年5月28日)では、身寄りのない高齢者等への対応として、@身寄りのない高齢者等の相談支援機能の強化、A日常生活支援(日常的な金銭管理や福祉サービス等利用の支援)、入院入所手続支援、死後事務支援等を提供する第二種社会福祉事業の新設、B身寄りのない高齢者等を支えるネットワーク構築が提言された。社会保障審議会福祉部会のとりまとめ(2025(令和7)年12月18日)でも、@新たな第二種社会福祉事業の創設、A権利擁護支援のコーディネートや関係機関の連携強化等を行う事務を市町村の努力義務とし、事務を担う中核機関の法定化が提言された。
こうした提言を踏まえ、2026(令和8)年4月3日に国会へ提出された「社会福祉法等の一部を改正する法律案」では、身寄りのない高齢者等を対象とする第二種社会福祉事業(福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業)の新設が改正内容として含まれている(図5)。
日自事業を拡大した内容に
第二種社会福祉事業として新設される「福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業」の内容をみると、日自事業(※)の対象者(判断能力が不十分な者)に、「頼れる身寄りがいない高齢者等」が加えられ、事業内容には従来の日常生活支援のほか、入院入所等手続き支援または死後事務支援が加わっている。入院入所手続き支援と死後事務支援のどちらもできる事業者には、両方を行うことが期待されている。
利用料については、日自事業では「無料または低額」となっているが、新たな事業では「資力の要件に該当する者については無料または低額」となっている。資力が十分でなくても支援の必要性がある者が利用できるようにする観点から、利用者のうち一定割合以上に無料または低額でサービス提供を行うことが求められている。この「一定割合」については、法案成立後、施行までの間に検討される。
なお、「地域における頼れる身寄りがいない高齢者等への支援に関する自治体向けガイドブック」(令和7年度厚生労働省老人保健健康増進等事業・身寄りのない在宅高齢者への支援に関する調査事業/2026(令和8)年3月)では、支援に関する前提の理解、地域における議論の進め方、課題解決に向けた取り組みの実践、取り組み開始後の効果検証等について事例も交えて記載されており、読み手として自治体職員を想定しているものの、事業に取り組む関係機関等にとっても参考となるものとなっているので、こうした資料も活用したい。
※…図5では「福祉サービス利用援助事業」となっているが、日常生活自立支援事業のなかの中心的なサービス項目が「福祉サービス利用援助事業」であり、ほぼ同義
■ この記事は月刊誌「WAM」2026年7月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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