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—大阪市・社会医療法人大阪国際メディカル&サイエンスセンター 大阪けいさつ病院—
スマートホスピタル構想により、医療サービスの質向上を図る

▲ 施設の外観

高度急性期病院として地域医療に貢献

 大阪市にある社会医療法人大阪国際メディカル&サイエンスセンター「大阪けいさつ病院」(理事長:澤芳樹氏)は、「いのち輝く未来に貢献する」という法人理念のもと、高度急性期医療の提供や医療従事者の育成などを通じて地域医療に貢献してきた。
 同院の開設は昭和12年で、平成30年に設立された医療法人警和会が運営主体の一般社団法人大阪府警察協会から大阪警察病院の事業譲渡を受け、同年4月から運営を開始している。令和4年に社会医療法人の認可を受け、令和6年7月から現在の法人名に改称している。
 そのほかにも、法人施設として、第二大阪警察病院、大阪警察病院付属人間ドッククリニック、大阪警察病院看護専門学校を運営している。
 同院が地域で担ってきた医療機能や役割について、院長の正井崇史氏は次のように説明する。
 「当院は、三次救急医療機関として一次から三次までのあらゆる救急患者を24時間体制で受け入れ、近畿圏における主要施設としての役割を果たしています。救急医療では、循環器疾患、脳神経疾患、三次救急の3つのホットラインをもち『断らない医療』を実践することにより、地域医療を支えてきました。第二大阪警察病院については、血液内科や免疫内科など難治性の内科系疾患の治療を得意とした病院となっています。法人名の改称については、医学研究に力を入れる医療機関であることを国内外に示したいという想いがありました。また、警察病院は国際的に留置所の病院を意味するため、法人名の改称とあわせて病院名の変更を検討しましたが、地域住民に長年慣れ親しまれていた病院名は残し、『大阪けいさつ病院』に表記を変更しています」。


2病院を統合して新病院を開設

 同院は、令和7年1月に「第二大阪けいさつ病院」と統合し、両院の強みをあわせもつ新病院を開設した。
 新病院では、急性期機能をさらに強化し、「超急性期病院」としての役割を担うとともに、新たな基本方針に「いのち輝くスマートホスピタルを実現する」を掲げ、医療DXの推進により医療サービスの質向上と業務の効率化を図り、持続可能な医療提供体制を構築することを目指した。
 同院の敷地面積は約1万7000�uで、JR大阪環状線桃谷駅から徒歩5分の好立地にある。建物は地上8階建てで1階は総合受付、検査部門、2階は外来診療、検査部門、3階は手術室、集中治療室、4階は事務部門が入り、5〜8階部分が病棟となっている。
 許可病床数は650床で、旧病院(580床)と第二大阪けいさつ病院(341床)をあわせた約900床から直近の稼働状況や将来的な医療需要を踏まえ、適切な病床数にダウンサイジングした。
 救急患者の受け入れ体制を強化し、手術室はハイブリッド手術室3室を含む17室を設置し、集中治療室はICU28床、HCU(高度治療室)28床、SCU(脳卒中集中治療室)9床の計65床に拡充した。さらに、救命救急センターの診療室や処置室を拡充することにより、旧病院の年間救急搬送件数8000件を1万件に増やすことを目標に掲げた。
 新病院では、ロボット手術にも力を入れ、手術支援ロボットの「ダビンチ」を3台導入している。
 「そのうちの2台は最新モデルで、1カ所の小さな切開で手術が完結する『ダビンチSP』(単孔式)と、従来モデルより3D映像の解像度が向上し、触覚を感知できる機能を搭載した『ダビンチ5』を新たに導入しました。正直なところ、ロボット手術は病院の持ち出しが多く、収益が上がりにくいという構造的な問題がありますが、世界的な流れであり、患者への負担が少ないことから力を入れています」(正井院長)。
 令和6年度の診療実績として、救急搬送受け入れ数は9983件とほぼ目標を達成しており、手術件数は1万件を超え、カテーテル治療件数は約4000件、病床稼働率は90%後半の高い水準を維持しているという。


 ▲ 令和7年1月にリニューアルオープンした「大阪けいさつ病院」の外来  ▲ 各病棟に設置したセンタールーム
 ▲ 明るく開放感のある病室とデイルーム
 ▲ 手術室は17室に拡張するとともに、最高性能の医療機器を導入
 ▲ 広々としたスペースのリハビリテーション室。リハビリテラスを併設し、屋外でもリハビリに取り組める環境をつくった  ▲ 屋上にはヘリポートを設置し、ドクターヘリによる搬送患者の受け入れを行う

スマートホスピタルの実現に向けた取り組み

 スマートホスピタルの実現に向けた取り組みとしては、AI・ICTなどを活用した医療DXを推進している。
 スマートホスピタルの具体的な取り組みについて、医療情報部次長の山本剛氏は次のように説明する。
 「新病院の開設にあわせて、院内スタッフのツールを刷新し、1800人の全スタッフに対して『iPhone』を支給しました。まずは電子カルテを『iPhone』に搭載することにより、業務の効率化を図りたいと考えましたが、旧病院の電子カルテでは搭載ができなかったため、システムを入れ替えすることからスタートしました」。
 「iPhone」は、内線電話、チャットコミュニケーション、ビデオ会議、電子カルテの参照、バイタル情報の取り込み、ナースコール、スタットコールなどに活用している。
 「医療者側として効果を実感しているのは、チャット機能を活用した情報伝達や情報共有です。医師からの指示や承認の連絡が途絶えると、業務が止まることが多いのですが、非常に便利です。チャットでの情報伝達は画像や動画を添付できるので伝えられる情報量が増え、時間短縮だけでなく、備忘録にもなります。看護師は、ナースステーションではなく、受け持ちの病棟の周りで業務ができるため、業務の効率化とともに、質の高いケアを提供することにもつながっています。とくに、若いスタッフは、スマホを中心に生活していることもあり、効率的に使いこなしています」(正井院長)。
 さらに、位置情報の機能を活用し、院内の医療機器などの物品の位置をリアルタイムで把握して探す手間を省くことで業務の効率化を図るほか、e-ラーニングアプリを導入し、時間や場所を問わず学習することが可能になっているという。
 「勤怠管理や給与明細の確認、人事労務に関する各種申請や手続きにも対応しており、医療だけではなく、院内の勤務や生活のすべてを網羅し、『iPhone』に集約しています。この規模の病院で1人1台導入することは、莫大な費用がかかり、初期設定でも相当苦労しましたが、スタッフの体感としては、これまでの業務時間が3分の2くらいに短縮したと効果を実感してもらっています」(山本次長)。


通院支援アプリを導入し、待ち時間の短縮を図る

 患者に対しては、VR受付を導入し、アバターによる院内案内を行うとともに、通院支援アプリ「wellcne(ウェルコネ)」を導入した。
 「wellcne」は、病院や薬局の滞在時間を短縮し、健康管理までサポートするスマホ用アプリで、患者のスマホに診察の待合順番を通知したり、アプリにクレジットカードを登録することで、アプリ決済(後払い会計)として診療費が自動で決済されるほか、処方箋をカメラで撮影してアプリから薬局に送信することで、薬を受け取るまでの時間を短縮できるなど、スムーズな通院をサポートしている。また、患者の検査結果や処方情報を閲覧でき、家族や利用者同士でデータを共有することが可能となっている。
 「『wellcne』の導入により、院内の混雑緩和や待ち時間が短縮し、スタッフの会計処理や案内などの業務負担も軽減しています。自動精算機の台数を減らせるため、ランニングコストの削減につながりますし、スマホにさまざまな機能を集約することで病院の設備投資や人材配置にも大きく影響しています」(山本次長)。


 ▲ 「iPhone」の導入により、大幅な業務の効率化を実現している
 ▲ 医療情報部 次長 山本 剛氏

AI・ICTを活用した災害対策に取り組む

 そのほかにも、スマートホスピタルの実現に向けた取り組みでは、医療機関では初めて地震検知システム「ユレーマス」の実証実験を実施している。
 「ユレーマス」は、気象庁の緊急地震速報より早く揺れを検知し、揺れる前に手術室の医療機器やエレベーターを自動制御できるシステムで、これにより地震発生時の被害を最小限に抑え、医療の持続性と安全確保を図ることが期待されている。実証実験は、大阪商工会議所と各企業との実証プログラムとして実施しており、南海トラフ巨大地震のリスクを抱える大阪府において、民間防災技術の有効性を示すモデルケースとして位置づけられているという。
 さらに、人材不足が深刻化するなか、スタッフの業務負担軽減や院内物流の効率化の実現を見据え、自律搬送ロボット「AI-MHOS」のデモ走行を行った。
 「自律搬送ロボットにいちばん期待していることとしては、薬や採血など膨大な検体の搬送です。現在は人の手で行っている業務をロボットが担うことにより、業務の負担軽減を図りたいと考えています。デモ走行では、環境の適応性や運用の安全性を中心に検証を行い、エレベーターでの垂直移動に課題がありましたが、それがクリアできれば大容量のモノが搬送できるメリットがあるので、導入を検討したいと考えています」(山本次長)。
 また、生成AIの活用については、事務部門の資料作成などで業務の効率化が飛躍的に進んでいる一方で、医師や看護師の活用が進んでいない現状があるという。
 「医師が作成する退院サマリーや診療情報提供書は業務の負担が大きく、生成AIで作成できれば非常に効率化しますが、カルテは個人情報のため、生成AIの学習で情報をネット上に乗せられないことが活用の進まない要因となっています。ただ、改良を重ねて活用していかなければ使えるものにはなりませんので、病院全体で取り組んでいく必要性があると考えています」(正井院長)。
 スマートホスピタルの実現により、医療サービスの質向上と業務の効率化を図るとともに、持続可能な医療提供体制の構築を目指す同院の今後の取り組みが注目される。


地域医療連携推進法人の設立を予定
社会医療法人大阪国際メディカル&サイエンスセンター大阪けいさつ病院
院長 正井崇史 氏

理事長  新病院では、救急搬送受入数や手術件数が目標を達成し、病床稼働率も高い水準を維持していますが、地域社会に貢献していくためには、持続可能な医療提供体制の仕組みをつくり、超急性期病院として「断らない医療」を実践していくことが当院の役割だと考えています。そのためには、地域の医療機関と役割分担しながら連携を図ることが重要となりますが、現在は地域医療連携推進法人の設立に向けた準備を進めているところです。
 今後の展望としては、地域には総合診療科で成功している医療機関がないことから、主に外来を担当するプライマリケア医のみならず病院総合診療医(ホスピタリスト)の確保・育成にも力を入れ、本格的な総合診療科をつくりたいと考えています。




<< 施設概要 >>
理事長 澤 芳樹
院長 正井 崇史
病院開設 昭和12年
病床数 650床(うちICU28床、HCU28床、SCU9床)
診療科 消化器内科、糖尿病・内分泌・代謝内科、腎臓内科、免疫内科、血液内科、腫瘍内科、呼吸器内科、精神科、循環器内科、心臓血管外科、小児科、消化器外科、乳腺・内分泌外科、整形外科、皮膚科、形成外再建外科・美容外科、脳神経外科、脳神経内科、呼吸器外科、泌尿器科、産婦人科、耳鼻咽喉科、眼科、リハビリテーション科、放射線診断科、放射線治療科、歯科・口腔外科、病理診断科、麻酔科、ER・救命救急科、集中治療科、総合診療科、感染症科
法人施設 大阪警察病院看護専門学校、大阪警察病院付属人間ドッククリニック
住所 〒543-0042 大阪市天王寺区烏ケ辻2-6-40
URL https://oim.or.jp/
TEL 06-6771-6051 FAX 06−6775−2838


■ この記事は月刊誌「WAM」2026年7月号に掲載されたものを一部変更して掲載しています。
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