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人材確保難時代の経営戦略について

 全6回に渡って、「人材」をテーマにお届けします。


<執筆>
 社会福祉法人伸こう福祉会 理事長 足立聖子 氏
米国ウィスコンシン大学社会学老年学専攻B.A卒業後、製薬会社勤務を経て、2000年社会福祉法人伸こう福祉会(神奈川県)に入職。「特別養護老人ホーム クロスハート栄・横浜」施設長、「横浜市屏風ヶ浦地域ケアプラザ」所長等を経て、2010 年同法人理事長に就任。2014 年優れた社会企業家を発掘・支援する「シュワブ財団」による「社会企業家2014」に同法人創業者とともに選出。


第2回:あなたの施設は本当に人材不足ですか?

4パターンに分かれる「人材不足」

 社会福祉法人の経営課題はさまざまですが、なかでも「人材」については皆さまの関心が非常に高いように感じます。
 ただし、ひとくちに「人材」といっても、最も関心が寄せられているテーマは、ここ数年で少しずつ変化しています。たとえば「よい人材の採用」は、福祉経営者にとって常に最も関心が高いテーマです。少し前はそれに「キャリアパス(成長支援)」や「処遇改善」、「職員のモチベーションアップ」が加わっていたようですが、ここ1〜2年は外国人採用や高齢者雇用というテーマにも注目が集まってきています。
 すでに雇用した職員の処遇をよくしていこうという流れから、再び職員確保策に経営者の関心が移った理由は、ここ数年で急激に高まった福祉業界の「人材不足」です。
 平成30年度の介護労働実態調査(図)によると、介護施設における「人材の不足感」については、平成25年には「大いに不足」、「不足」と答えた事業所は全体の56・5%に過ぎなかったものが、平成30年には67・2%と大幅に増加しています。実に7割近くの事業者が「人手不足」を感じているという驚くべき結果が出ているのです。
 実際のところ、福祉経営者が集まると決まって「人材不足」の話題が出ます。「おたくはどうやって職員を採用しているの?」、「離職防止策で有効なものは何?」などは、よく聞かれる質問ですが、実は私自身も話しているうちに気がついたことがあります。
 同じように「人が足りない」という言葉を使っていても、ある経営者は「人員不足」の話をしており、また別の経営者は個々の職員の力量不足によって生じる「人材不足感」の話をしているのです。そこで「人材不足」という言葉の意図するところは、実は法人によって異なるのではと考えました。

平成30年度の介護労働実態調査
●パターン1:介護職や専門職が利用者定員に対しての基準に足りない

 よく言われる「人員不足」の状況です。さまざまな理由により介護保険制度の人員配置基準を満たすことができず、加算の取り下げや減算、場合によっては施設定員の見直し、利用者受け入れの一時停止などが必要となる場合もあります。事業所運営に与えるダメージは深刻で、慢性化した場合、経営の立て直しを図ることは非常に困難になります。原因としては、募集をかけても応募者がいない、せっかく採用できても定着しないという場合が多いです。まれに採用担当者の思い込みや選り好み(年配の介護職は採用しない、有資格者以外は採用しない等)が原因の場合もあります。
 対策としては、まず採用ルートや採用担当者、採用手法自体を見直すこと。さらには職員の定着に向けた人事制度や処遇の見直し、資格取得のための研修の充実などが有効です。

●パターン2:人員配置基準ギリギリの運営で、職員の負担感が大きい

 介護保険制度の人員配置基準に照らしあわせると、ギリギリで人数は足りており、なんとかシフトは組めるが、かなり綱渡りの状況であるという事業所です。常に誰か(よくあるケースとしては、主任などの管理職)が早番から遅番までの、いわゆる「通し」勤務をしている、有給休暇が取れない、外部研修に職員を行かせることができないなどが常態化します。こういった施設の場合、そこで働くスタッフは心身ともに疲弊しているケースが多く、体調不良による離職で前述パターン1のような状況に陥るリスクを抱えています。
 このような施設では、まずは日常業務の見直しから着手しなくてはなりません。必ずしも介護職がやらなくてもよい仕事は、ボランティアの方にお願いします。不要な会議や申し送り、だれも見ない記録などは、思い切って削減することも必要です。さらには職員向けのカウンセリングや福利厚生などを積極的に取り入れて、職員をいたわるためのお金と労力を使いましょう。なお、私の経験上、単純な昇給のみでは問題の解決にはつながらず、むしろ逆効果になる場合もありますので気をつけてください。

●パターン3:職員の人数は足りているが、個々の技術や勤務のバランスが悪い

 新規開設や職員の入れ替わりが多い施設などでよくあるパターンです。職員の人数自体は充足しているものの、個々の力量に差がある場合や、パート職員が多いため出勤者の数が時間帯によってまちまちであるケースです。いずれの場合も技術が高く、勤務時間も柔軟に対応できる特定の者に負荷がかかります。通常、こういったリーダー的な職員は通常業務に加えて新人の指導など、その他にも役割を持っている場合が多いため、この職員が体調不良で休んだり、退職した場合、一気に職場がまわらなくなるリスクがあります。
 この場合は、まず仕事の切り分けから始めましょう。リーダーには、その方にしかできない仕事のみを任せ、それ以外の新人でもできる仕事は外し、なるべく仕事量が偏らないようにします。また、新人研修はいっそのこと外部委託するのも手です。この場合、経営者は「〇〇しなければならない」(たとえば、緊急時の家族への連絡はリーダーがしなくてはならない、夜勤は8時間以上連続勤務ができる者がやらなくてはならない等)という従来のやり方を一時停止し、柔軟な対応を考えなくてはなりません。またパターン2の場合とは逆に、特定の職員に一時的に負荷がかかっている場合は、その職員のみに特別手当を付与することで、貢献への感謝を示すことも考慮してみてください。

●パターン4:新人が採用できていない

 比較的少数ではありますが、福祉経営者が「うちは人がいなくて…」とおっしゃる時、それは適当な後継者や若手職員がいないという意味の場合もあります。こういった施設は、職員が定着し、長年にわたってあまり顔ぶれが変わっていないというよい点がある反面、管理職が固定化されているが故に新しい職員が入っても、自身のキャリアパスの見通しが立たないという理由ですぐに辞めてしまう、人件費が年々上昇して経営を圧迫しているなどの課題を持っていることが多いのです。若い人が定着しないから後継者が育たない、ベテラン職員は従来のやり方に固執しがちで、業務改善が難しいという悩みもよく聞きます。
 これはもう思い切って、職場に新しい空気(新卒職員)を入れるしかありません。それも最低5人以上は同時に採用したいところです。なぜかというと、1人や2人では職場に新しい空気が流れることはないからです。しかし5人もいれば、グループとしての存在感もそれなりに生じ、若手への指導を通じて、ベテラン職員にもよい気づきや緊張感が生まれる可能性も大です。新卒職員は法人の未来ですから、仮に今は余剰人員であったとしても、先行投資をする価値はあります。新卒職員は、マイナビやリクナビ等のメディアを通じた採用のほか、一度に多くの人数を取るのであれば、いっそのこと採用エージェントへの外部委託も検討してみてください。
 私は、福祉経営者の役割とは、自法人内の限られた資源(人、モノ、金)を、最良の方法で配分することであると思っています。そして自法人のサービスの根幹となる「人」に対する投資は、必ず法人の未来に繋がります。

※ この記事は月刊誌「WAM」2019年11月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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