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耐火木造による高齢者福祉施設づくりの最新情報


全6回に渡って、耐火木造を用いた高齢者福祉施設づくりについて お届けします。


<執筆>
金沢工業大学環境・建築学部建築デザイン学科 教授
A/E WORKS 専務理事 栗田 紀之

第5回:ツーバイフォー構法による耐火木造A〜みやぎ台南生苑


みやぎ台南生苑を訪ねる


 ツーバイフォー構法の2件目の事例は、千葉県船橋市の特別養護老人ホーム(以下、特養)「みやぎ台南生苑」を取り上げる。船橋市北部の下総台地の上にあり、畑と住宅地に囲まれたロケーションである。延床面積5800uに達する国内最大級の耐火木造で、かつ3階建てでありながら、10mの高さ制限により低く抑えられ、街並みに溶け込むスケール感となっている。
 取材当日は、施設長の中島祥治氏(社会福祉法人南生会理事)と、設計者の吉高久人氏(吉高綜合設計コンサルタント代表)にお話をうかがった。


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施設の概要


 みやぎ台南生苑は、中央に3階建ての管理棟を挟み、南側に3階建て、北側に2階建てのユニット棟を配し、各棟が(※1)エキスパンションジョイントでつながる構成である(図1)。
 構造は各棟とも2×6材を基本としたツーバイフォー構法で、大空間を確保する等の目的でルート3相当の構造計算ルートをとっている。また全棟、一般社団法人日本ツーバイフォー建築協会の認定仕様による(※2)メンブレン型の耐火構造を採用している。


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※1 エキスパンションジョイント… 異なる性状をもった構造体同士を接続する場合、構造的に縁を切り、力を伝達しないようにする継目
※2 メンブレン(被覆)型耐火構造… 石膏ボード等の不燃材料で、木部を耐火被覆することで、木材が燃焼・炭化しないようにする構造。メンブレン(membrane)は「膜」の意味

木造とした経緯


 施設を木造としたのは、事業コンセプトに合致したことによる。
 事業者の南生会は1992年に特養(鉄筋コンクリート造、現在は83床)を開設して以来、デイサービスセンターやグループホーム等、多数の社会福祉施設を運営している。2012年12月、船橋市の特養整備事業者の公募に応募したが、近年は法人間の競争が激しく、高いレベルの事業計画が要求されるようになってきている。そこで南生会では「5つのゼロ、4つの自立支援」の実践をコンセプトに掲げて提案に取り組んだ。とくにおむつゼロや、積極的な歩行リハビリ等の自立支援のため、必要な設備を備えながらも、できるだけ安全にしたいという点から木造にこだわり、高く評価された。また、最近は特養建設の際に近隣住民から反対されることもあるが、みやぎ台南生苑については反対の声が出なかったという。
 木造でできる設計者を探したところ、候補の吉高氏が設計した耐火木造の特養「大野の郷」(茨城県鹿嶋市)を見学したことが決め手となり、同氏に決定した。
 実は吉高氏は、耐火木造(ツーバイフォー構法)による高齢者福祉施設の設計では、もはや第一人者といってよい。特養「明治清流苑」(大分市、2006年竣工)を手がけて以来、みやぎ台南生苑が7件目になる。
 そのため、木造の導入はとくにトラブルもなく、実にスムーズに進んだそうである。唯一の誤算は、震災復興やオリンピック開催決定の影響で、2014年夏頃より労務費が急騰し、工事費が増えたこと。坪単価60万円で10億円という計画が、結果12億円となった。それでも吉高氏は、公共施設の入札不調が続くなか、木造の価格優位性を説く。

施工者と勉強会


 施工は地元ゼネコンの京成建設鰍ェ担当したが、大規模耐火木造を手がけるのはもちろん初めてである。ここでは、大規模木造のノウハウと耐火木造のノウハウの両方が必要とされる。
 ツーバイフォー構法の躯体工事に該当するフレーミング工事については、大手コンポーネント会社である三井ホームコンポーネント鰍ニ連携を取った。膨大な量のツーバイフォー部材の加工・供給に加え、職人(フレーマー)の確保も円滑に進んだ。
 一方、メンブレン(耐火被覆)工事については、京成建設にとにかく勉強してもらったという。吉高氏が講師となり、現場監督、職人、設備施工者を集め、勉強会を開催した。耐火工事は細部のツメが重要であるが、過去の事例写真が数千枚あり、よい教材となった。ツーバイフォー構法の基礎から始めて徹底的に指導したのが功を奏し、きれいに仕上がったそうである。

ユニットケアと動線


 みやぎ台南生苑では、ユニットケアを導入している。10床のユニット2つを基本単位とし、北棟は2階建てで4ユニット、南棟は3階建てで6ユニット、計10ユニットで100床の構成で、3階にある2ユニットがショートステイである。
 プランの特徴として、オモテの動線とウラの動線を設けたことがあげられる。
 中央の光庭を廻るわん曲した廊下を設けるなど、オモテの動線はあえて冗長にし、同階のユニット同士に距離をもたせて「家」としての独立性を高めている。分棟型に近いイメージである。
 一方、バックヤード内に階段を設け、縦のウラ動線をもってきたのは、吉高氏の新しい試みである。
 個室ユニットは18・2uの面積を確保し、全室にトイレを設けている。そのためか、面会者が非常に多く、入居者と家族で長時間過ごしているそうである。また地域交流の拠点としての大空間(スパン11・5m)も確保され、喫茶室の営業も予定している。

▲写真1 みやぎ台南生苑 ▲写真2 玄関ホーム
▲写真3 わん曲した廊下

※ この記事は月刊誌「WAM」平成27年2月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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