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第8回:社会福祉法人のコンプライアンス
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「コンプライアンス」という言葉には、一般的に2つの側面があります。1つ目は、法令遵守と訳されることもある法令に従った活動という側面(ただし、法令に従えばよいわけではないことは後述のとおり)、2つ目は、法令に従った活動を確保して不祥事を防ぐための仕組み(コンプライアンス体制)という側面になります。

1つ目の側面についてですが、よく「コンプライアンス」は「法令遵守」と訳されることがあります。しかし、とくに社会福祉法人においては、法令に違反さえしなければよいわけではありませんので、この訳は適当ではないように思われます。法令で禁止されている行為は、不適切な行為のうち特に悪質性の高いものであり、法令に違反はしていないけれども、社会的に非難される行為はいくらでもあります。

コンプライアンスの目的は法人価値の毀損防止

そこで、この1つ目の側面としての「コンプライアンス」の意味を改めて考えてみたいと思います。この側面において、不祥事を起こさないこと自体は決して最終目的ではなく、あくまでも手段に過ぎません。「コンプライアンス」の最終的な目的は、不祥事が発生することによって、施設の利用者、地域住民、職員、行政その他の利害関係者から法人への信頼が損なわれ、ひいては法人価値が毀損することを防止することにあると考えるべきです。そう考えた場合、「コンプライアンス」とは、利害関係者から法人への信頼が損なわれ、法人価値が毀損するような事態が発生することを防止すること又は発生した場合に影響を最小限に留めることであると考えることができます。この考え方は「ガバナンス」の最終目的とも合致するものです。そうであれば、利害関係者から法人への信頼が損なわれ、法人価値が毀損する事態とは、法令に違反した場合に限られず、各利害関係者からの合理的な要請に背く行為をした場合も含まれると考えるべきということになります。

具体的には、社会福祉施設を運営する社会福祉法人の利害関係者として、運営する施設の利用者、地域住民、職員および行政などが考えられます。例えば、運営する施設で重大な事故が発生し、利用者が死亡したようなケースを想定した場合、当該利用者の家族からは、なぜ事故が起きたのか、事故当時の状況はどのようなものだったのか等について詳しく説明してほしいという要請が働きます。また、同施設を利用する他の利用者、地域住民、行政からは、どのような事故が起きたのか、再発防止策はどうなっているのかといったことを公表するべきであるという要請が働くことがあります。

しかし、法令上はどこまで説明しなければならない又は公表しなければならないという一律の基準はありません。そのため、家族への説明を十分にしない、または、十分な情報公開をしなかったとしても、そのこと自体が直接法令違反になることはありません。しかし、法人がこのような対応に終始した場合、法令違反ではなかったとしても、家族等の利害関係者からこの法人への信頼は損なわれ、ひいては法人価値が毀損されることになりますので、それでは最終目的を達することはできません。

したがって、「コンプライアンス」とは、決して法令違反さえしなければよいわけではなく、利害関係者からの合理的な要請、つまりは社会的なルールや職業倫理を遵守し、社会的責任に応えることであり、それに反するような事態の発生を防止して法人価値が毀損されることがないようにすることだと考えるべきです。

不祥事を防ぐための仕組み

次に2つ目の側面ですが、これは「内部管理体制」や「内部統制システム」と呼ばれるものと同じような趣旨になります。社会福祉法人制度改革によって、特定社会福祉法人においては「理事の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他社会福祉法人の業務の適正を確保するために必要なものとして厚生労働省令で定める体制の整備」について、理事会で必ず決定しなければならないとされました(社会福祉法第45条の13第4項第5号、第5項)。この「体制」のことを「内部管理体制」や「内部統制システム」(以下「内部管理体制」という)と呼ぶことがあります。この内部管理体制の概要、内容および法人における作業の流れについては図(内部管理体制の概要等)に記載されたとおりです。

社会福祉法に定められたこの内部管理体制の内容は多岐にわたりますが、「コンプライアンス」に強く関係するのが「理事の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制」、「職員の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制」になります。この観点から重要になるのが、決定権限が誰に分配されているのか、つまりは責任者が誰であるのかを法人内において明確に決めることです。この視点は、厚生労働省が示した内部管理体制の基本方針例において「『理事会運営規則』及び『評議員会運営規則』に基づき、理事会及び評議員会の役割、権限及び体制を…(中略)…を明確にし、適切な理事会及び評議員会の運営を行う」、「『理事職務権限規程』に基づき、業務を執行する理事の担当業務を明確化し、事業運営の適切かつ迅速な推進を図る」、「職務分掌・決裁権限を明確にし、理事、職員等の職務執行の適正性を確保するとともに、機動的な業務執行と有効性・効率性を高める」という記載にも表われています。まずは決定権限者・責任者を明確にしたうえ、その者による決定内容がわかる証跡を残し、事後的に当該決定が法令及び定款に違反するものになっていないかを第三者が確認し、問題があれば是正措置を講じるという流れをつくることが重要になります。

これらの考え方について、具体例を用いて確認していきます。不祥事の典型例としては、会計担当者による横領が考えられます。まず、理事長や担当の業務執行理事には、当該職員を監督する義務があると考えられているため、担当として役割、権限を付与された理事は、当該職員が不正な行為をしていないかを監督しなければなりません。しかし、法人の規模が大きくなればなるほど、一職員の行動を監督することは困難になります。そこで、必要になってくるのが内部管理体制の構築・運用です。ここでいう内部管理体制とは、誤解を恐れずに一言で言えば、不正を防止する仕組みのことであり、横領事案であれば、横領がしづらくなるような仕組みや万が一横領がされた場合にも速やかにそれを発見できるような仕組みのことを指します。この内部管理体制の基本方針の決定は理事に委任できないため(法45条の13第4項第5号)、理事会で決議する必要があります。そして、その基本方針に基づいて、具体的な内部管理体制を構築して、運用する義務が理事長や担当の業務執行理事にはあると考えられていますので、適切な内部統制システムを構築・運用することで、職員による横領を防止することが求められます。

具体的には、金銭の出納業務を行う職員と責任者を明確に定めたうえ、これら複数の職員による確認を経ないと金銭の出納ができないこととし、その金銭の出納がいつ、何のために、いくらされ、その決定を誰がしたのかなどを文書等で残すことをルールとして定めることが考えられます。また、これらの金銭出納を、1月に1度は他の職員が事後的に確認し、その結果を担当理事に報告することといったルールを定めることで、横領がしづらくなる仕組み、万が一横領が行われても早期に発見できる仕組みを整えることが考えられます。

図
まとめ

「コンプライアンス」をこのように捉えた場合、法令違反しないことはもとより、社会福祉法人や社会福祉事業に従事する者に対する利害関係者からの合理的な要請を適時に把握し、対応していかなくてはなりません。なぜなら、この要請の内容は、時代や価値観の変化とともに変わりゆくものだからです。この変化に対応できない結果、法人や役職員には悪気がないにもかかわらず、法人に対する信頼が損なわれ、法人価値が毀損される例もありますので、注意する必要があります。

※ この記事は月刊誌「WAM」2020年11月号に掲載されたものを掲載しています。

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