トップ

高齢・介護

アイコン

医療

アイコン

障害者福祉

アイコン

子ども・家庭

旧トップ
ページへ

トップ背景
wamnetアイコン
検索アイコン
知りたいアイコン
ロックアイコン会員入口
アイコントップ |
アイコン高齢・介護 |
アイコン医療|
アイコン障害者福祉|
子ども・家庭
アイコン



ランダム表示の広告
福祉医療広告

高齢・介護
医療
障害者福祉
子ども・家庭

連載コラム
トップ

トラブルに学ぶリスク対策

介護現場で起きた事例を踏まえ、原因とその防止策のポイントをお伝えしていきます。



<執筆>
株式会社安全な介護 代表取締役
山田 滋(やまだ しげる)
<プロフィール>
介護現場で積み上げた実践に基づくリスクマネジメントの方法論は、「わかりやすく実践的」と好評。著書に『安全な介護』(筒井書房)、『介護施設の災害対策ハンドブック』(中央法規)など多数

事例E:デイサービスにおける認知症利用者の加害事故

こんな事故が起きました!

認知症の重い男性S さんが利用しているH デイサービスは、規模の大きい定員30名のにぎやかなデイサービスです。68 歳で身体に障害がなく体力もあるSさんは、時々興奮して他の利用者を叩いたりするので、職員は目が離せません。ある日、職員が目を離した隙に、女性利用者に腹を立てて突き飛ばして骨折させてしまいました。謝罪に来たS さんの息子さんに対してデイサービスでは「被害者への賠償をきちんとお願いします。デイサービスも迷惑しているのだから」と被害者への対応を促し、S さんの利用は中止してもらいました。ところが、S さんの息子さんは賠償資力がなく治療費が支払えなかったことから、被害者がデイサービスに不満を訴えてきました。

事故原因と防止対策

デイサービスのにぎやかな雰囲気があわなかったり、広いデイルームに不安を感じて興奮し、他の利用者に対して暴力行為や迷惑行為をしてしまう認知症の利用者がいます。デイサービスではこうした利用者に対して、スペースを狭く区切って落ち着いて過ごせる居場所を作るなどの工夫をしていますし、特定の利用者に敵意をもつような場合は、職員が見守るなどの対策を取っています。

しかし、これらの対策にも限界がありますから、本事例のような事故は避けられないこともあります。では、このようなデイサービスにおける認知症利用者の加害事故が起きた時、デイサービスはどのように対応すべきなのでしょうか。まず、法的な責任をチェックしておきましょう。

加害者に認知症がある場合、本人は責任無能力者として賠償責任を負わず、本人の保護者と代理人の役割をしている家族等が本人に代わって賠償責任を負うことになります(民法714条1項)。しかし、デイサービスの利用中(管理下中)に起きた事故では、デイサービスも代理監督義務者として家族と連帯して賠償責任を負わなくてはなりません(民法714条2項)。このケースでは、被害者はどちらに対しても全額請求することができますから、加害者家族に賠償資力がなければデイサービスが全額賠償しなければなりません。監督義務者がその監督義務を怠らなかったときは責任を免れる(民法第714条1項但書)とありますが、介護のプロであるデイサービスは監督義務を怠らなかったと立証することは難しいでしょう。

では、デイサービスは認知症で暴力行為などがある利用者に、どのように対応すればよいのでしょう。そもそもHデイサービスのような規模の大きいデイサービスでは、Sさんの対応は難しいように思います。質の高い認知症の個別ケアができる、小規模のデイや多機能事業所ではSさんも落ち着けるでしょう。大きなデイで認知症のない利用者から自尊心を損なうような言葉をかけられ、悲しい思いをする認知症の利用者をみると「もっとよいデイサービスはないのかな?」と思ってしまいます。

トラブルを避ける事故対応(本事例のケース)

デイサービスを運営している事業者のなかには、利用者同士の事故やトラブルはデイサービスに管理責任はないと考えて、事故の当事者に対して「利用者同士で話しあってください」という対応をするケースがあります。しかし、前述のように認知症利用者の加害事故ではデイサービスにも法的な責任が生じますから、当事者として責任をもって事故の解決に当たらなければなりません。「デイサービスも迷惑しているのだから」と傍観者ではいられないのです。

※ この記事は月刊誌「WAM」平成27年9月号に掲載された記事を一部編集したものです。
  月刊誌「WAM」最新号の購読をご希望の方は次のいずれかのリンクからお申込みください。

ページトップ