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トラブルに学ぶリスク対策

介護現場で起きた事例を踏まえ、原因とその防止策のポイントをお伝えしていきます。



<執筆>
株式会社安全な介護 代表取締役
山田 滋(やまだ しげる)
<プロフィール>
介護現場で積み上げた実践に基づくリスクマネジメントの方法論は、「わかりやすく実践的」と好評。著書に『安全な介護』(筒井書房)、『介護施設の災害対策ハンドブック』(中央法規)など多数

事例㉞:深夜に騒ぎ出した認知症の利用者を職員が虐待

こんな事故が起きました!

特別養護老人ホームの主任Sさんは、その日夜勤でしたが下痢がひどく、つらい勤務でした。相方が仮眠をとっている深夜1時頃に、認知症の重いMさんが廊下で騒ぎ出したため鎮めようとしましたが、執拗に同じ言葉を繰り返しながらSさんの腕を掴むので振り払います。5分以上同じことを繰り返した挙句、センサーコールが鳴り、コールに対応しようとしたS主任の腕をMさんが執拗に掴みました。この時、S主任はイライラがピークに達し、Mさんの手を掴んで顔を殴ってしまいました。施設長は「真面目な主任で信頼していたのに残念だ」と言いました。Mさんは抗精神病薬を2種類服用しています。

事故原因と防止対策

職員による虐待事件が起きると、その職員個人の責任で終わらせてしまい、組織的な発生原因を考えようとしない傾向があります。管理者も施設に原因があるとは考えずに、「信頼していたのに…」などと他人事のように片づけます。しかし、虐待事件にも必ず組織的な発生原因があり、管理者がその対策を講じていれば防げたのです。このような視点で本事件の真の原因を探ってみましょう。

まず、どんなに感情コントロールに長けたベテランでも、体調不良の時は理性で自分をコントロールできなくなることがあります。実は人が最も理性を失いやすい体調不良は、「下痢」なのです。脳が強いストレスや不安を抱えた時、下痢を起こしやすくなることは誰でも知っていますが、その逆もあるのです。私たちはひどい下痢の時には脳がストレスや不安を感じやすくなってイライラして、感情のコントロールがしにくくなります。これを脳腸相関と呼びます。S主任は最悪のコンディションだったのです。

また、認知症の利用者の行為に介護職員が最もストレスを感じるのは、「同じ行為を執拗に繰り返す(常同行動という)」時だそうです。私たちが211人の介護職員に実施したアンケートで、「最も理性を失いやすい認知症の利用者の行為は?」との問いに対し、最も多かった答えは「同じ行為を執拗に繰り返す」だったのです。

つまり、S主任は偶然最も理性を失いやすい条件が、2つも重なった場面に遭遇してしまったのです。もし、S主任が脳腸相関や常同行動についての知識をもっていたら、もっと用心したのではないでしょうか?夜勤の相方に「今夜は体調不良で認知症の対応が難しいかもしれないから頼むね」と声をかけたかもしれません。Mさんの常同行動に直面した時にも、すぐに相方に応援を求めることができたかもしれません。

このように、人が理性的な対応ができなくなる場面には一定の条件があるのです。「いつでも理性的な対応ができるように頑張る」ではなく、自分たちの弱みをきちんと知って逃げ道を用意しておかなくては虐待は防げないのです。施設管理者は「職員による虐待は絶対にあってはならない」といいますが、管理者が適切な対策を講じていないから虐待が起きるのです。決してS主任一人の責任ではないのです。

深夜に騒ぎ出した認知症の利用者を職員が虐待

もう一つ、認知症利用者への虐待について、大切な視点が見逃されています。Mさんは抗精神病薬を2種類服用していましたが、認知症利用者のBPSDを鎮静させる目的で処方されているリスペリドンやクエチアピンなどの抗精神病薬が、逆にBPSDを悪化させることが明らかになってきました。厚生労働省の研究事業によって2回も作成されている「かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン」にはその弊害が指摘され、医師は処方に慎重であるべきとされています。厚生労働省は、2015年2月の通知で施設職員による虐待の原因として、認知症利用者に対応する職員の知識不足をあげていますが、BPSD悪化の原因となる処方薬を放置しているのは本末転倒ではないでしょうか?

※ この記事は月刊誌「WAM」2018年1月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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