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トラブルに学ぶリスク対策

介護現場で起きた事例を踏まえ、原因とその防止策のポイントをお伝えしていきます。



<執筆>
株式会社安全な介護 代表取締役
山田 滋(やまだ しげる)
<プロフィール>
介護現場で積み上げた実践に基づくリスクマネジメントの方法論は、「わかりやすく実践的」と好評。著書に『安全な介護』(筒井書房)、『介護施設の災害対策ハンドブック』(中央法規)など多数

事例F:デイの送迎時に家族が介助して転倒

こんな事故が起きました!

Dさん(88 歳男性)はデイサービスを利用している車椅子使用の利用者です。通常移動は車椅子介助なのですが、自宅の門から玄関だけは砂利道なので車椅子が使えず、職員が二人で歩行を介助しています。ある日、玄関に着くと奥様(82 歳)がドアを開けてくださり、「ここでいいですよ」とDさんに手を差し伸べたため、介助員は「ではお願いします」と言って手を離しました。すると、Dさんが急にふらつき奥様にもたれかかるようにして一緒に転倒し、D さんは大腿骨を骨折してしまいました。デイサービスは「奥様が“ ここでいいですよ” と言ったのでお任せした。デイサービスの送迎範囲は玄関までで送迎業務は終了しており過失はない」と主張しています。

事故原因と防止対策

まず、デイサービス側の主張について検討してみましょう。デイサービスの送迎業務の範囲はどこまでなのでしょうか? デイサービスの送迎業務の範囲は「居宅の玄関まで」などの場所ではなく、「居宅に帰着し安全な状態と認められるまで」です。なぜなら、送迎業務は単に利用者を輸送する業務ではなく、車両乗降や屋外歩行を介助して移動させるという施設の介護業務の一環とみなされるからです。

では、奥様が「ここでいいですよ」と介助を辞退した時は、お任せしてもよいのでしょうか? 本来施設の職員がすべき介助業務であっても、家族が自ら介助すると申し出ればお任せしても問題ありません。しかし、それは家族に任せても安全であると判断できる場合に限られます。本事例のケースも、誰の目から見ても「こんな場所で高齢の奥様に介助を任せるのは危険」と判断されれば、家族の申し出を断って居宅内の安全な場所にお連れしなければなりません。利用者自身が介助を辞退(拒否)して転倒骨折した事故の裁判で、施設の過失とされた判例もありますので注意が必要です(※)。

また、デイサービスの送迎では、居宅と送迎車間の移動介助での事故が大変多く、その大きな要因は劣悪な移動環境を放置していることにあります。車椅子介助の利用者を歩かせていれば、転倒の危険が高くなるのは当然です。なぜ、ケアマネジャーに依頼して、住宅改修の給付を利用して砂利道を整備しようとしないでしょうか?

その他にも階段を背負って登ったり、車椅子で無理な段差を超えるなど危険な環境で移動介助をしている例がたくさんあります。

※ デイサービスの利用者(要介護度2で杖歩行)が、デイサービス終了時にトイレに行きました。この時職員は本人が「一人で大丈夫だから」と言って、トイレのドアを閉めてしまったので、トイレ内までは付き添いませんでした。被害者はトイレ内で転倒し大腿骨を骨折してしまいました。被害者の家族は、たとえ本人が「一人で大丈夫だから」と言っても、歩行が不安定で転倒の可能性が高く介助すべきであり、デイサービスに過失があると訴訟を提起。裁判所は原告の訴えを認め賠償金の支払いを命じました。 (H17年3月20日横浜地裁判例)

トラブルを避ける事故対応

利用者の居宅の環境によって送迎業務に危険が生じるような場合、ケアマネジャーによる住宅改修を依頼すると同時に、家族に改善を依頼することも重要です。同居の奥様だけでなく、近所に住んでいる息子さんなどにも送迎環境の改善をお願いするのです。家族に対して事故防止に関する役割をお願いすることは、事故防止に対する理解を促す意味でも大きな効果があり、事故が発生した際もトラブルを避けることができます。

※ この記事は月刊誌「WAM」平成27年10月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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