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連載コラム
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トラブルに学ぶリスク対策

介護現場で起きた事例を踏まえ、原因とその防止策のポイントをお伝えしていきます。



<執筆>
株式会社安全な介護 代表取締役
山田 滋(やまだ しげる)
<プロフィール>
介護現場で積み上げた実践に基づくリスクマネジメントの方法論は、「わかりやすく実践的」と好評。著書に『安全な介護』(筒井書房)、『介護施設の災害対策ハンドブック』(中央法規)など多数

事例N:ヘルパーが個人情報の盗難被害、対応に納得しない家族

こんな事故が起きました!

訪問介護のヘルパーが、訪問途中のファミレスの駐車場で車上荒らしに遭い、後部座席に置いてあった利用者(独居で全盲の女性)の個人情報が入ったバッグを盗まれてしまいました。事業所では、市に利用者の個人情報漏えい事故を報告し、近所に別居している息子さんに謝罪しました。息子さんに「補償はどうなるのか?」と尋ねられた管理者は「盗まれた物は警察が捜索しているし、個人情報漏えいの損害保険にも加入している」と答えました。数日後に息子さんから連絡があり、「個人情報漏えいの補償はどうなっているのか?」と言われ保険会社に連絡しましたが、「漏えいしただけでは僅かな見舞金しか支払えない」と言われてしまいました。

事故原因と防止対策

本事例の個人情報漏えい事故の直接の原因は、もちろんヘルパーが車の後部座席に大切な書類カバンを無造作に放置していたことですから、訪問介護事業所は個人情報漏えいの防止対策を徹底しなければなりません。

今やどの企業でも、顧客の個人情報の帳票類が入ったカバンは、車を離れる時は身に付けるかトランクに入れて施錠するというルールが徹底されています。居宅サービスの事業者は、大切なお客様の個人情報を扱っているという意識が低く、ルールが徹底されていない傾向があります。あるヘルパー向けの研修会で、参加者の半数が口の閉まらないトートバッグを持っていたことに驚きました。仕事の書類を買い物バッグに入れている意識の低さは大きな問題です。

しかし、本事例の重要な問題は個人情報漏えいの原因ではありません。個人情報漏えいが発生した時の対処方法を理解していないことなのです。介護事業者が扱うのはハンディがある高齢者の個人情報ですから、個人情報の漏えいによって発生する二次被害の防止に全力をあげなくてはならないのです。本事例の利用者は全盲で独居ですが、それらの情報が犯罪者の手に渡ったとしたら、個人情報の漏えいが原因で犯罪被害に遭うかもしれません。まず、この利用者を犯罪被害から守ることに手を尽くすべきだったのです。

ヘルパーが個人情報の盗難被害

具体的には、息子さんに犯罪被害の防止が最優先であることを説明して、警察に事情を話して保護願いを出すなどの対処が考えられます。実際に発生した同様のケースでは、訪問介護事業所の職員が1カ月間、毎日安否確認の訪問と電話入れを行うなどの対処もしました。何万件もの個人情報がインターネットで漏えいする企業であれば、漏えい防止のみに重点を置けばよいかもしれません。しかし、介護事業者はすべての顧客がハンディのある高齢者で、今や格好の犯罪ターゲットにされています。たった一人の利用者の個人情報の漏えいが、その利用者を犯罪被害の危険に晒してしまうことの重みを、事業者は自覚しなければなりません。現実に、驚くべき数の高齢者が電話一本で簡単に詐欺被害に遭っていますが、その電話番号は闇で取引された高齢者の個人情報なのです。

トラブルを避ける事故対応

リスクマネジメントの基本は事故を防止することです。しかし、事故を完璧に防ぐことはできませんから、事故が発生した時の被害を軽減することも重要な対策です。多くの介護事業者にとっては利用者の個人情報の漏えいは、単なる過敏なクレーム程度の認識しかありません。とくに独居の高齢者にとっては、個人情報の漏えいが生命の危険につながりかねないのですから、本人の安全確保を最優先に事故後対応を行わなければなりません。「事故が起きた時は保険に加入していれば安心」では、高齢者福祉に携わる事業者として恥ずかしいと思いませんか?

※ この記事は月刊誌「WAM」平成28年6月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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