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連載コラム
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トラブルに学ぶリスク対策

介護現場で起きた事例を踏まえ、原因とその防止策のポイントをお伝えしていきます。



<執筆>
株式会社安全な介護 代表取締役
山田 滋(やまだ しげる)
<プロフィール>
介護現場で積み上げた実践に基づくリスクマネジメントの方法論は、「わかりやすく実践的」と好評。著書に『安全な介護』(筒井書房)、『介護施設の災害対策ハンドブック』(中央法規)など多数

事例㉚:広報誌に利用者の写真掲載しクレーム

こんな事故が起きました!

ある特別養護老人ホームの広報誌に「私のお気に入り」という特集を組み、利用者のお気に入りを紹介することになりました。認知症がある女性利用者Mさんは、いつでも女の子の人形を抱いているので、相談員が「Mさんの人形を広報誌に掲載したい」と、キーパーソンの長男に電話で依頼し了解をもらいました。ところが、市民センターのパンフレット立てに置いてあった広報誌を見た次男が、「認知症の母が人形を抱いている写真が載っている」とクレームを言ってきました。相談員は、「キーパーソンのご長男から了解を得ているので問題ない」と答えましたが、次男は市に苦情申立を行いました。

事故原因と防止対策

施設側では、このトラブルの原因は「Mさんの写真が広報誌に掲載されることを次男が知らず、次男とキーパーソンの長男の意見があわなかったことだ」と捉えました。しかし、認知症の利用者の顔写真と氏名を広報誌に掲載する際に、電話で「広報誌に掲載したい」と了解を取る方法は少し丁寧さに欠けます。また、広報誌を市民センターのパンフレット立てに置くことを長男は了解していませんし、認知症の利用者の個人情報が掲載された広報誌を、公共の場に無造作に置くのは配慮が足りません。認知機能にハンディがある人の個人情報は、より慎重に取り扱うのは当然なのです。

本事例のような介護福祉の利用者の個人情報の取り扱いに関する、事業者とのトラブルは大変増えています。個人情報保護法によって利用者や家族の個人情報に対する意識が高まったことも一つの要因ですが、それにも増して介護福祉事業者や施設側の個人情報の取扱いに対する配慮が足りないことが大きな原因なのです。例えば、広報誌に利用者の個人情報を掲載したいのであれば、どのような写真と文章が掲載されるかゲラ刷り(校正原稿)を見せて了解を取る必要がありますし、配布先も説明して掲載の了解を求めなければなりません。

広報誌に利用者の写真掲載しクレーム

このように、介護事業者の個人情報を巡るトラブルはそのほとんどが、利用者の個人情報の取り扱いのルールを家族に説明していないことが原因なのです。例えば、入所施設に利用者に関する電話での問い合わせがあった場合、どのように対応するのかルールを作っている施設は多くはありません。もし、利用者の息子さんから利用者の体調についての問い合わせがあった時、「あなたが息子さん本人だと確認できないのでお答えできません」と言ったら、息子さんは怒るでしょう。逆に、利用者の友人という人から電話で問い合わせがあった時に、詳しく教えてしまったら家族とトラブルになるかもしれません。「利用者に関する電話での問い合わせの対応ルール」を決めておけば、このようなトラブルは避けられます。個人情報に対する取り扱いルールは、法規などで決めるものではなく、事業者がお客様に対する標準的なルールを提示して理解を求めるものなのです。

トラブルを避ける事故対応

施設などの個人情報を巡るトラブルは、入所者の個人情報の取り扱いルールを決めていないことが大きな問題ですが、もう一つ問題があります。それは、個人情報に関するクレームの対応方法です。個人情報に関する個人の感じ方や考え方は千差万別で、敏感な人と鷹揚な人の差がとても大きいのです。ですから、クレームの申立があった時に「施設の考え方は〇〇だから」と押し付けてはいけません。クレーム申立者の個人情報に対する考え方をお聴きして、できる限り配慮することをお伝えするのです。たとえ施設が決めた取り扱いルールがあっても、すべての家族がそれに従う必要はないのですから。

※ この記事は月刊誌「WAM」2017年9月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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