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連載コラム
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トラブルに学ぶリスク対策

介護現場で起きた事例を踏まえ、原因とその防止策のポイントをお伝えしていきます。



<執筆>
株式会社安全な介護 代表取締役
山田 滋(やまだ しげる)
<プロフィール>
介護現場で積み上げた実践に基づくリスクマネジメントの方法論は、「わかりやすく実践的」と好評。著書に『安全な介護』(筒井書房)、『介護施設の災害対策ハンドブック』(中央法規)など多数

事例㉜:面会家族による食事介助中に誤えんで死亡

こんな事故が起きました!

頻繁に特別養護老人ホームの入所者に面会に来る長男の妻が、いつものように食事介助を申し出たためお願いしました。ところが、介助中に利用者の顔が急にガクッと下を向いて動かなくなり、気づいた看護師が誤えんと判断し吸引を施して救急搬送しましたが、病院で亡くなりました。病院に駆けつけた長男は、取り乱して泣いている妻を見て「入所者の介護は職員がやるべきではないのか?」と、施設長に疑問を呈しました。施設長は、「介護したいとおっしゃられれば、ご家族の責任でお願いしています」と回答しましたが、息子さんは何かいいたい様子でした。

事故原因と防止対策

介助していたのが家族といっても実子ではありませんから、長男の奥様は大変なショックを受けたことでしょう。「余計なことをして大ごとになってしまった」と悔いる妻の気持ちを考えて、長男も施設長に文句の一つもいいたくなったのでしょう。

しかし、面会時に家族が利用者の介助を申し出ることは珍しくなく、施設は家族の責任でお願いしています。いくら「本来施設の職員がやるべき業務である」といっても、家族の介助の申し出をむげに断れませんから、施設長のいっていることも間違いとはいえません。

では、施設内の家族介助による事故で施設は責任を問われないのでしょうか。介助業務を素人である家族に任せることに顕著な危険がある場合に、安易に家族に介助を任せれば施設が責任を問われるかもしれません。例えば次のようなケースです。

1.入所以降に摂食えん下機能低下があり、家族にその認識がない場合

2.介護職員でも食事介助が難しく、素人である家族に任せることで明らかな危険が生ずる場合

3.誤えんのリスクが高く、しかも家族には誤えん発生時の適切な対処が期待できない場合

食事の介助に限らず、歩行の介助などでも家族の介助に著しい危険があれば、たとえ申し出があっても断らなければなりません。施設は介護の仕事で報酬を得ていますし、介護職員は家族と異なって介護のプロですから、家族から介助の申し出があっても介護のプロとして適切に判断しなければなりません。決して「家族の要望だから」といって安易に丸投げしてはなりません。

誤えん事故ではなかった

実は本事例は続きがあります。検死の結果、死因は動脈瘤破裂と判明したのです。偶然食事中に発生したので誤えん事故だと思い込んだのです。長男はわざわざ施設までやって来て「母の死因は病気でした。興奮して失礼なことを言って申し訳なかった」と丁寧に謝罪されました。施設長は「奥様はご自分を責めていらしたのでホッとされたことでしょう」と答えました。

面会家族による食事介助中に誤えんで死亡

施設職員が介助中に誤えん事故が発生した時、家族は窒息の苦痛を想像して職員や施設を責める気持ちになります。しかし、誤えん事故で利用者が亡くなった時、最も責任を感じて自分を責めるのは介護職員です。私たちが誤えん発生時の救命対処にこだわるのは、介護職員にこのような思いをさせたくないからです。

トラブルを避ける事故対応

利用者に事故が発生すると、家族が責任を追及していると思い込んで、すぐに施設側の責任回避ばかり主張する管理者がいますが、重大事故の直後はまず家族の気持ちを気遣わなければなりません。本事例の事故直後の施設長の発言は適切ではありません。奥様ではなく介護職が介助していれば、介護職が同じように辛い思いをしたのです。家族の気持ちを気遣って「施設が行うべき食事介助をお任せしたために、奥様に辛い思いをさせて申し訳ありません」と対応すべきでした。

※ この記事は月刊誌「WAM」2017年11月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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