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2-3.社会福祉連携推進法人制度
社会福祉連携推進法人制度の解説

執筆:独立行政法人福祉医療機構

経営サポートセンター シニアリサーチャー 千葉 正展

(令和元年度 社会福祉法人の事業展開等に関する検討会 構成員)

T.制度検討の背景

社会福祉連携推進法人制度を含む一連の社会福祉法人制度の事業展開については、令和元年6月に閣議決定された「成長戦略フォローアップ」が検討のきっかけとなりました。そこでは@協働化・大規模化の促進方策の検討(この中に社会福祉連携推進法人制度の検討が含まれます。)、A合併等の会計処理の明確化、B協働化大規模化の事例及びガイドラインなどを検討することとされました(図表1)。

(図表1) 社会福祉法人に係る事業展開等の検討

図表1
虫眼鏡

資料:筆者作成

社会福祉連携推進法人制度に係る法令・通知

社会福祉連携推進法人の制度は、令和4年4月1日に施行された改正社会福祉法において定められています。また社会福祉連携推進法人に係る政令・省令・通知等については、図表2のようなものが制定されています(図表2)。

(図表2) 社会福祉連携推進法人制度に係る政省令・通知等

図表2
虫眼鏡

出典:令和3年度 社会・援護局関係主管課長会議 資料5(厚生労働省)PDF[3.4MB]リンクアイコ

U.社会福祉連携推進業務

社会福祉連携推進法人は、1以上の社会福祉連携推進業務を行うこととされています。社会福祉法第125条において6つの業務が定められています(図表3)。

(図表3) 社会福祉連携推進業務

1.地域福祉支援業務

2.災害時支援業務

3.経営支援業務

4.貸付業務

5.人材等確保業務

6.物資等供給業務

1.地域福祉支援業務

1)地域福祉支援業務とは

地域福祉支援業務とは、地域福祉の推進に係る取組を社員が共同して行うことを支援する業務を言います(図表4)。

(図表4) 地域福祉支援業務

図表4
虫眼鏡

出典:社会福祉連携推進法人の運営等について(厚生労働省) PDF[4MB]リンクアイコ

2)地域福祉支援業務の要件

地域福祉支援業務については、次の@からBまでのすべてに該当していることが求められています。

@ 地域福祉の推進に係る取組(※1)であること

A 当該取組を社員が共同して行うものであること

B 当該取組を連携推進法人が支援する(※2)ものであること

※1  「地域福祉の推進に係る取組」とは、法令に基づく事業に関連する取組に限らず、地域住民の福祉ニーズに対応するインフォーマルな取組も広く該当するとされています。

※2  「当該取組を連携推進法人が支援する」とは、福祉サービス自体は社員が行うことを前提としつつ、社員間の情報共有や連絡調整、ノウハウの共有等といった連携強化のための支援を行うことを言うとされています。従って、当該業務の対象はあくまで社員であって、また法第132条第4項で定めているように、社会福祉連携推進法人が地域住民に対して社会福祉事業、その他社会福祉を目的とする福祉サービスを提供することはできないことになります。

ただし、例外的に地域の福祉ニーズを踏まえつつ、連携推進法人が社員である 社会福祉法人等を支援する一環で、社会福祉を目的とする福祉サービス(社会福祉事業を除く。)であって、先駆的なものや地域における供給量が著しく不足するもの等を行う場合については、次のア及びイの要件をいずれも満たせば、地域福祉支援業務に該当するものとして差し支えありません。

ア 連携推進法人と社員の両方が当該福祉サービスを提供していること

イ 連携推進法人から社員へのノウハウの移転等を主たる目的とするなど、連携推進法人が福祉サービスを実施することが社員への支援に当たること

3)地域福祉支援業務の内容例

地域福祉支援業務の内容については、社会福祉法第24条第2項に定められている社会福祉法人の地域における公益的な取組を含め、社員が行う地域福祉に関する取組を促進するなどの観点から、例えば次のようなものが挙げられています。

・ 地域住民の生活課題を把握するためのニーズ調査の実施

・ ニーズ調査の結果を踏まえた新たな取組の企画立案、支援ノウハウの提供

・ 取組の実施状況の把握・分析

・ 地域住民に対する取組の周知・広報

・ 社員が地域の他の機関と協働を図るための調整

・ 社員の経営する施設又は事業所(以下「施設等」という。)の利用者であって、判断能力が不十分なもの等に対する法人後見

2.災害時支援業務

1)災害時支援業務とは

災害時支援業務とは、災害が発生した場合における社員が提供する福祉サービスの利用者の安全を社員が共同して確保することを支援する業務とされています(図表5)。

(図表5) 災害時支援業務

図表5
虫眼鏡

出典:社会福祉連携推進法人の運営等について(厚生労働省) PDF[4MB]リンクアイコ

2)災害時支援業務の要件

災害時支援業務については、その内容が次の@からBまでのすべてに該当しているものであることが求められています。

@災害(※1)が発生した場合において、社会福祉事業を経営する社員が提供する福祉サービス(※2)の利用者の安全を確保するための取組であること

A当該取組を社員が共同して行うものであること

B当該取組を連携推進法人が支援(※3)すること

※1  「災害」には、自然災害に限らず、感染症の発生等の危機的状況も含まれるものであることとされています。

※2  「社会福祉事業を経営する社員が提供する福祉サービス」には、社会福祉事業を経営する社員が提供する福祉サービスであれば、社会福祉事業に限らず、特段の制約はなく、例えば福祉避難所として受け入れた被災者等に対する支援も含まれるとされています。

※3  「当該取組を連携推進法人が支援する」とは、社員が提供する福祉サービスの利用者の安全を確保するための取組に対して、社員間の情報共有や連絡調整、人材や物資の融通等といった支援を行うものであることとされています。

災害時支援業務の実施に当たって、連携推進法人及びその社員は、常に連携推進法人の活動区域内の地方公共団体(認定所轄庁以外の地方公共団体を含む。以下同じ。)と連携し、これらの対策と調和が保たれるよう、努めなければならないこととされています。

3)災害時支援業務の内容例

災害時支援業務の内容については、災害時において、社員が提供する福祉サービスに係る事業継続性の確保や相互支援体制の整備などを図る観点から、例えば次のようなものが挙げられています。

・ 災害時支援ニーズの事前把握

・ いわゆる業務継続計画の策定や避難訓練の実施

・ 被災した社員の経営する施設等(以下「被災施設等」という。)に対する被害状況調査の実施

・ 被災施設等に対する応急的な物資の備蓄・提供

・ 被災施設等の利用者の他施設への移送の調整

・ 被災施設等で不足する人材の応援派遣の調整

・ 地方公共団体との連絡・調整

3.経営支援業務

1)経営支援業務とは

経営支援業務とは、社員が経営する社会福祉事業(法第2条第1項に規定する社会福祉事業をいう。以下同じ。)の経営方法に関する知識の共有を図るための支援を行う業務を言います(図表6)。

(図表6) 経営支援業務

図表6
虫眼鏡

出典:社会福祉連携推進法人の運営等について(厚生労働省) PDF[4MB]リンクアイコ

2)経営支援業務の要件

経営支援業務については、その内容が次の@及びAのいずれにも該当しているものであることが求められています。

@ 社員が経営する社会福祉事業の経営方法に関する知識の共有(※1)を図る取組であること

A 当該取組を連携推進法人が支援する(※2)ものであること

※1   「社員が経営する社会福祉事業の経営方法に関する知識の共有」とは、特定の社員が持つ経営方法に関する知識を共有することに限らず、社会福祉事業の経営ノウハウを共有するなどの取組も該当するものであることとされています。

「社会福祉事業の経営方法に関する知識」とは、社会福祉事業の経営を確立するためには幅広い知識が求められることを踏まえ、直接的に社会福祉事業に関わる知識に限られるものではないこととされています。

※2   「当該取組を連携推進法人が支援する」とは、当該取組の実施に当たって、社員間の連絡調整、社員へのコンサルティング等の支援を行うものであることとされています。

経営支援業務には、連携推進法人が社員の事務処理の代行を行うことも含まれますが、関係法令に違反しない範囲で行われる必要があります。例えば、租税に関する申告や書類の作成等は税理士法により、また労働基準法や職業安定法等に基づく書類の作成や手続等は社会保険労務士法により、それぞれの法律が定める者のみが取り扱えることとされていることから、連携推進法人が行うことはできないことには留意が必要です。

3)経営支援業務の内容例

経営支援業務の内容については、社員の経営の適正化又は効率化などを支援する観点から、例えば次のようなものが挙げられています。

・ 社員に対する経営ノウハウ等に関するコンサルティングの実施

・ 賃金テーブルの作成等人事・給与システムに関するコンサルティングの実施

・ 社員の財務状況の分析・助言

・ 社会福祉法人会計に関する研修の実施等適正な財務会計の構築に向けた支援

・ 社員の特定事務に関する事務処理の代行

・ 社員の施設等における外国人材の受入れ支援(介護職種に係る技能実習の監理団体として行う業務に限る。)

4.貸付業務

1)貸付業務とは

貸付業務とは、資金の貸付けを通じた社会福祉事業に係る業務を行うのに必要な資金を調達するための支援を行う業務を言います(図表7)。

(図表7) 貸付業務

図表7
虫眼鏡

出典:社会福祉連携推進法人の運営等について(厚生労働省) PDF[4MB]リンクアイコ

2)貸付業務の要件

〈業務内容に関する要件〉

貸付業務については、その内容が次の@及びAのいずれにも該当しているものであることが求められています。

@ 社会福祉法人である社員に対する貸付けであること

A 当該貸付けに係る原資は、貸付けを受ける社員以外の社会福祉法人である社員から連携推進法人に対して貸付けを受けたものであること

〈貸付契約の締結方法〉

貸付業務を行う場合の契約の締結方法については、次の@及びAのとおりとすることが求められています。

@貸付原資を連携推進法人に提供する社員(以下「貸付原資提供社員」という。)と連携推進法人との間の金銭消費貸借契約、連携推進法人と貸付けを受ける社会福祉法人である社員(以下「貸付対象社員」という。)との間の金銭消費貸借契約を、それぞれ締結すること(※1)

A貸付資金が返済不能となる場合に備え、返済不能時の資金回収手続や、回収資金分配等の処理について、私法上の契約を締結すること

※1  金銭消費貸借契約について、連携推進法人の社員は、特別の利害関係を有する社員が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされた場合、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第266条の規定に基づき、裁判所に社員総会等の決議の取消しの訴えが提起できるとされています。

〈金融機関等の補完的役割〉

連携推進法人の貸付業務は、民間金融機関による融資や独立行政法人福祉医療機構等による政策融資の補完的な役割を担うものであることとされています。

〈貸付業務の実施方法〉

貸付業務の実施に当たっては、以上に掲げられた手続きのほか、「社会福祉連携推進法人認定・運営基準」通知の別紙1の「貸付業務の実施方法」に従って行うこととされています。

5.人材確保等業務

1)人材確保等業務とは

人材確保等業務とは、社員が経営する社会福祉事業の従事者の確保のための支援及びその資質の向上を図るための研修を行う業務を言います(図表8)。

(図表8) 人材確保等業務

図表8
虫眼鏡

出典:社会福祉連携推進法人の運営等について(厚生労働省) PDF[4MB]リンクアイコ

2)人材確保等業務の要件

人材確保等業務については、その内容が次の@及びAのいずれかに該当していることが求められています。

@ 社員が経営する社会福祉事業の従事者の確保(※1)のための支援

A 社員が経営する社会福祉事業の従事者の資質の向上を図るための研修

※1   「社会福祉事業の従事者の確保」には、次のような多様な取組が広く含まれます。

・ 新たな従事者の募集や採用、外国人材の受入れの調整等多様な人材の確保のための取組

・ 社員間の人事交流の支援等既存の従事者が職場に定着するための取組

・ 学生に対する職場体験の調整等福祉の仕事の魅力を発信するための取組

〈職業紹介事業・労働者派遣事業への抵触に注意〉

人材確保等業務には、連携推進法人が社員間の人事交流を支援することも含まれますが、労働関係法令に抵触しない方法で行う必要があります。

例えば、連携推進法人が自ら求人及び求職の申込みを受け、社員である法人との間の雇用関係の成立をあっせんすることは職業安定法に定める職業紹介事業に該当し、連携推進法人と従業員とが雇用契約を締結し、当該従業員を社員である法人の指揮命令において当該社員の下で労働に従事させることは、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)に定める労働者派遣事業に該当するものであり、職業紹介事業又は労働者派遣事業を行う場合は、別途職業安定法又は労働者派遣法の規定に基づき、適正な手続により許可を得ることが必要となります。

〈委託募集の手続きについて〉

社会福祉法第134条の規定に基づき、社員が連携推進法人に対し、社会福祉事業に従事する労働者の募集を委託する場合には、「社会福祉連携推進法人認定・運営基準」通知の別紙2の「委託募集の特例の実施方法」に従って行う必要があります。

3)人材確保等業務の内容例

人材確保等業務の内容については、社員が提供する福祉サービスの従事者の確保、その職場への定着、資質の向上などを図る観点から、例えば次のようなものが挙げられています。

・ 社員合同での採用募集

・ 出向等社員間の人事交流の調整

・ 賃金テーブルや初任給等の社員間の共通化に向けた調整

・ 社員の施設等における職場体験、現場実習等の調整

・ 社員合同での研修の実施

・ 社員の施設等における外国人材の受入れ支援(経営支援業務である介護職種に係る技能実習の監理団体として行う業務を除く。)

6.物資等供給業務

1)物資等供給業務とは

物資等供給業務とは、社員が経営する社会福祉事業に必要な設備又は物資の供給を行う業務を言います(図表9)。

(図表9) 物資等供給業務

図表9
虫眼鏡

出典:社会福祉連携推進法人の運営等について(厚生労働省) PDF[4MB]リンクアイコ

2)物資等供給業務の要件

物資等供給業務については、その内容が次の@及びAのいずれにも該当しているものであることが求められています。

@ 社員が経営する社会福祉事業に必要な設備又は物資であること

A 当該設備又は物資を連携推進法人が供給すること(※1)

※1  「当該設備又は物資を連携推進法人が供給すること」には、連携推進法人が一括調達して社員に供給することのほか、連携推進法人が生産して社員に供給することを含むものとされています。

なお、食品衛生法等の関係法令を遵守した上で、社員から連携推進法人が委託を受けて、社員の施設等で提供される給食についてもこれに含まれるとされています。

3)物資等供給業務の内容例

物資等供給業務については、社員の物資調達に係る費用の効率化、事務負担の軽減などを図る観点から、例えば次のような内容が挙げられます。

・ 紙おむつやマスク、消毒液等の衛生用品の一括調達

・ 介護ベッドや車いす、リフト等の介護機器の一括調達

・ 介護記録の電子化等ICTを活用したシステムの一括調達

・ 社員の施設等て?提供される給食の供給

7.社会福祉連携推進業務以外の業務

社会福祉連携推進業務以外の業務(以下、「その他業務」という。)については、社会福祉連携推進業務に関連する業務であって、以下の要件が満たされれば、事業内容について特段の制約はなく、実施することができるとされています。

@ その他業務の事業規模が連携推進法人全体の事業規模の過半に満たないものであること

A その他業務を行うことによって社会福祉連携推進業務の実施に支障を及ぼすおそれがないものであること

B 社会福祉事業その他社会福祉を目的とする福祉サービス事業でないこと

このほか、その他業務については、連携推進法人の社会的信用を傷つけるおそれのあるもの又は投機的なものは適当ではないこととされています。

また、その他業務から得られた収益は、社会福祉連携推進業務に充当することとされています(図表10)。

(図表10) 社会福祉連携推進業務以外の業務

図表10
虫眼鏡

出典:社会福祉連携推進法人の運営等について(厚生労働省) PDF[4MB]リンクアイコ

V.社会福祉連携推進法人のガバナンス

社会福祉連携推進法人のガバナンスについては、図表11の通りです。社会福祉連携推進法人は、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下、「一般法人法」という。)に基づく一般社団法人として設立・登記され、これに一定の要件を具備したことを所轄庁が認定の上、登記されることによって法人として成立します。

従って、社会福祉連携推進法人に関するガバナンスの基本的な骨格は、一般法人法に定めるところに従うことになります。

1.社員・社員総会

具体的には、一般社団法人は「社員」と呼ばれる主体によって構成されます。そしてその社員が議決権を行使することによって法人運営の意思を決定することになります。そのための議決機関のことを「社員総会」と呼びます(図表11)。

(図表11) 社会福祉連携推進法人のガバナンスルール

図表11
虫眼鏡

出典:社会福祉連携推進法人の運営等について(厚生労働省) PDF[4MB]リンクアイコ

2.理事・理事会、監事

社員総会の議決に基づいて法人の業務の執行を掌理するのが理事であり、理事によって構成される会議体を理事会と呼びます。理事はその代表者として理事長を選任します。

さらに法人には監事を置き、理事及び理事会が行う法人運営の適正について統制監督を行うものとされています(図表12)。

(図表12) 連携推進法人における法人ガバナンスの概要

図表12
虫眼鏡

出典:社会福祉連携推進法人の運営等について(厚生労働省) PDF[4MB]リンクアイコ

3.社会福祉連携推進評議会

社会福祉連携推進法人には、一般法人法の定めにない機関として社会福祉連携推進評議会という機関が設置されることとなっています。

社会福祉連携推進評議会とは、連携推進法人の意見具申・評価機関として、理事会の決議に基づき代表理事が招集することになっています。

社会福祉連携推進評議会の構成は、地域の福祉の増進に資するよう、連携推進法人が実施する社会福祉連携推進業務の種類に応じ、福祉サービスを受ける立場にある者、社会福祉に関する団体、学識経験者をはじめ、幅広い視点から、中立公正な立場で、連携推進法人に対して意見を述べることができる者が含まれることとなっています。また、そのなかには、社会福祉連携推進区域(連携推進法人が業務を実施することとしている区域のこと)の福祉サービスの実情に通じている者を必ず加えることとされています(図表13)。

(図表13) 社会福祉連携推進評議会の位置付け等について

図表13
虫眼鏡

出典:社会福祉連携推進法人の運営等について(厚生労働省) PDF[4MB]リンクアイコ

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2-3.社会福祉連携推進法人制度
社会福祉連携推進法人制度の解説

執筆:独立行政法人福祉医療機構

経営サポートセンター シニアリサーチャー 千葉 正展

(令和元年度 社会福祉法人の事業展開等に関する検討会 構成員)

T.制度検討の背景

社会福祉連携推進法人制度を含む一連の社会福祉法人制度の事業展開については、令和元年6月に閣議決定された「成長戦略フォローアップ」が検討のきっかけとなりました。そこでは@協働化・大規模化の促進方策の検討(この中に社会福祉連携推進法人制度の検討が含まれます。)、A合併等の会計処理の明確化、B協働化大規模化の事例及びガイドラインなどを検討することとされました(図表1)。

(図表1) 社会福祉法人に係る事業展開等の検討

図表1
虫眼鏡

資料:筆者作成

社会福祉連携推進法人制度に係る法令・通知

社会福祉連携推進法人の制度は、令和4年4月1日に施行された改正社会福祉法において定められています。また社会福祉連携推進法人に係る政令・省令・通知等については、図表2のようなものが制定されています(図表2)。

(図表2) 社会福祉連携推進法人制度に係る政省令・通知等

図表2
虫眼鏡

出典:令和3年度 社会・援護局関係主管課長会議 資料5(厚生労働省)PDF[3.4MB]リンクアイコ

U.社会福祉連携推進業務

社会福祉連携推進法人は、1以上の社会福祉連携推進業務を行うこととされています。社会福祉法第125条において6つの業務が定められています(図表3)。

(図表3) 社会福祉連携推進業務

1.地域福祉支援業務

2.災害時支援業務

3.経営支援業務

4.貸付業務

5.人材等確保業務

6.物資等供給業務

1.地域福祉支援業務

1)地域福祉支援業務とは

地域福祉支援業務とは、地域福祉の推進に係る取組を社員が共同して行うことを支援する業務を言います(図表4)。

(図表4) 地域福祉支援業務

図表4
虫眼鏡

出典:社会福祉連携推進法人の運営等について(厚生労働省) PDF[4MB]リンクアイコ

2)地域福祉支援業務の要件

地域福祉支援業務については、次の@からBまでのすべてに該当していることが求められています。

@ 地域福祉の推進に係る取組(※1)であること

A 当該取組を社員が共同して行うものであること

B 当該取組を連携推進法人が支援する(※2)ものであること

※1 「地域福祉の推進に係る取組」とは、法令に基づく事業に関連する取組に限らず、地域住民の福祉ニーズに対応するインフォーマルな取組も広く該当するとされています。

※2  「当該取組を連携推進法人が支援する」とは、福祉サービス自体は社員が行うことを前提としつつ、社員間の情報共有や連絡調整、ノウハウの共有等といった連携強化のための支援を行うことを言うとされています。従って、当該業務の対象はあくまで社員であって、また法第132条第4項で定めているように、社会福祉連携推進法人が地域住民に対して社会福祉事業、その他社会福祉を目的とする福祉サービスを提供することはできないことになります。

ただし、例外的に地域の福祉ニーズを踏まえつつ、連携推進法人が社員である 社会福祉法人等を支援する一環で、社会福祉を目的とする福祉サービス(社会福祉事業を除く。)であって、先駆的なものや地域における供給量が著しく不足するもの等を行う場合については、次のア及びイの要件をいずれも満たせば、地域福祉支援業務に該当するものとして差し支えありません。

ア 連携推進法人と社員の両方が当該福祉サービスを提供していること

イ 連携推進法人から社員へのノウハウの移転等を主たる目的とするなど、連携推進法人が福祉サービスを実施することが社員への支援に当たること

3)地域福祉支援業務の内容例

地域福祉支援業務の内容については、社会福祉法第24条第2項に定められている社会福祉法人の地域における公益的な取組を含め、社員が行う地域福祉に関する取組を促進するなどの観点から、例えば次のようなものが挙げられています。

・ 地域住民の生活課題を把握するためのニーズ調査の実施

・ ニーズ調査の結果を踏まえた新たな取組の企画立案、支援ノウハウの提供

・ 取組の実施状況の把握・分析

・ 地域住民に対する取組の周知・広報

・ 社員が地域の他の機関と協働を図るための調整

・ 社員の経営する施設又は事業所(以下「施設等」という。)の利用者であって、判断能力が不十分なもの等に対する法人後見

2.災害時支援業務

1)災害時支援業務とは

災害時支援業務とは、災害が発生した場合における社員が提供する福祉サービスの利用者の安全を社員が共同して確保することを支援する業務とされています(図表5)。

(図表5) 災害時支援業務

図表5
虫眼鏡

出典:社会福祉連携推進法人の運営等について(厚生労働省) PDF[4MB]リンクアイコ

2)災害時支援業務の要件

災害時支援業務については、その内容が次の@からBまでのすべてに該当しているものであることが求められています。

@災害(※1)が発生した場合において、社会福祉事業を経営する社員が提供する福祉サービス(※2)の利用者の安全を確保するための取組であること

A当該取組を社員が共同して行うものであること

B当該取組を連携推進法人が支援(※3)すること

※1  「災害」には、自然災害に限らず、感染症の発生等の危機的状況も含まれるものであることとされています。

※2 「社会福祉事業を経営する社員が提供する福祉サービス」には、社会福祉事業を経営する社員が提供する福祉サービスであれば、社会福祉事業に限らず、特段の制約はなく、例えば福祉避難所として受け入れた被災者等に対する支援も含まれるとされています。

※3 「当該取組を連携推進法人が支援する」とは、社員が提供する福祉サービスの利用者の安全を確保するための取組に対して、社員間の情報共有や連絡調整、人材や物資の融通等といった支援を行うものであることとされています。

災害時支援業務の実施に当たって、連携推進法人及びその社員は、常に連携推進法人の活動区域内の地方公共団体(認定所轄庁以外の地方公共団体を含む。以下同じ。)と連携し、これらの対策と調和が保たれるよう、努めなければならないこととされています。

3)災害時支援業務の内容例

災害時支援業務の内容については、災害時において、社員が提供する福祉サービスに係る事業継続性の確保や相互支援体制の整備などを図る観点から、例えば次のようなものが挙げられています。

・ 災害時支援ニーズの事前把握

・ いわゆる業務継続計画の策定や避難訓練の実施

・ 被災した社員の経営する施設等(以下「被災施設等」という。)に対する被害状況調査の実施

・ 被災施設等に対する応急的な物資の備蓄・提供

・ 被災施設等の利用者の他施設への移送の調整

・ 被災施設等で不足する人材の応援派遣の調整

・ 地方公共団体との連絡・調整

3.経営支援業務

1)経営支援業務とは

経営支援業務とは、社員が経営する社会福祉事業(法第2条第1項に規定する社会福祉事業をいう。以下同じ。)の経営方法に関する知識の共有を図るための支援を行う業務を言います(図表6)。

(図表6) 経営支援業務

図表6
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出典:社会福祉連携推進法人の運営等について(厚生労働省) PDF[4MB]リンクアイコ

2)経営支援業務の要件

経営支援業務については、その内容が次の@及びAのいずれにも該当しているものであることが求められています。

@ 社員が経営する社会福祉事業の経営方法に関する知識の共有(※1)を図る取組であること

A 当該取組を連携推進法人が支援する(※2)ものであること

※1  「社員が経営する社会福祉事業の経営方法に関する知識の共有」とは、特定の社員が持つ経営方法に関する知識を共有することに限らず、社会福祉事業の経営ノウハウを共有するなどの取組も該当するものであることとされています。

「社会福祉事業の経営方法に関する知識」とは、社会福祉事業の経営を確立するためには幅広い知識が求められることを踏まえ、直接的に社会福祉事業に関わる知識に限られるものではないこととされています。

※2  「当該取組を連携推進法人が支援する」とは、当該取組の実施に当たって、社員間の連絡調整、社員へのコンサルティング等の支援を行うものであることとされています。

経営支援業務には、連携推進法人が社員の事務処理の代行を行うことも含まれますが、関係法令に違反しない範囲で行われる必要があります。例えば、租税に関する申告や書類の作成等は税理士法により、また労働基準法や職業安定法等に基づく書類の作成や手続等は社会保険労務士法により、それぞれの法律が定める者のみが取り扱えることとされていることから、連携推進法人が行うことはできないことには留意が必要です。

3)経営支援業務の内容例

経営支援業務の内容については、社員の経営の適正化又は効率化などを支援する観点から、例えば次のようなものが挙げられています。

・ 社員に対する経営ノウハウ等に関するコンサルティングの実施

・ 賃金テーブルの作成等人事・給与システムに関するコンサルティングの実施

・ 社員の財務状況の分析・助言

・ 社会福祉法人会計に関する研修の実施等適正な財務会計の構築に向けた支援

・ 社員の特定事務に関する事務処理の代行

・ 社員の施設等における外国人材の受入れ支援(介護職種に係る技能実習の監理団体として行う業務に限る。)

4.貸付業務

1)貸付業務とは

貸付業務とは、資金の貸付けを通じた社会福祉事業に係る業務を行うのに必要な資金を調達するための支援を行う業務を言います(図表7)。

(図表7) 貸付業務

図表7
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出典:社会福祉連携推進法人の運営等について(厚生労働省) PDF[4MB]リンクアイコ

2)貸付業務の要件

〈業務内容に関する要件〉

貸付業務については、その内容が次の@及びAのいずれにも該当しているものであることが求められています。

@ 社会福祉法人である社員に対する貸付けであること

A 当該貸付けに係る原資は、貸付けを受ける社員以外の社会福祉法人である社員から連携推進法人に対して貸付けを受けたものであること

〈貸付契約の締結方法〉

貸付業務を行う場合の契約の締結方法については、次の@及びAのとおりとすることが求められています。

@貸付原資を連携推進法人に提供する社員(以下「貸付原資提供社員」という。)と連携推進法人との間の金銭消費貸借契約、連携推進法人と貸付けを受ける社会福祉法人である社員(以下「貸付対象社員」という。)との間の金銭消費貸借契約を、それぞれ締結すること(※1)

A貸付資金が返済不能となる場合に備え、返済不能時の資金回収手続や、回収資金分配等の処理について、私法上の契約を締結すること

※1  金銭消費貸借契約について、連携推進法人の社員は、特別の利害関係を有する社員が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされた場合、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第266条の規定に基づき、裁判所に社員総会等の決議の取消しの訴えが提起できるとされています。

〈金融機関等の補完的役割〉

連携推進法人の貸付業務は、民間金融機関による融資や独立行政法人福祉医療機構等による政策融資の補完的な役割を担うものであることとされています。

〈貸付業務の実施方法〉

貸付業務の実施に当たっては、以上に掲げられた手続きのほか、「社会福祉連携推進法人認定・運営基準」通知の別紙1の「貸付業務の実施方法」に従って行うこととされています。

5.人材確保等業務

1)人材確保等業務とは

人材確保等業務とは、社員が経営する社会福祉事業の従事者の確保のための支援及びその資質の向上を図るための研修を行う業務を言います(図表8)。

(図表8) 人材確保等業務

図表8
虫眼鏡

出典:社会福祉連携推進法人の運営等について(厚生労働省) PDF[4MB]リンクアイコ

2)人材確保等業務の要件

人材確保等業務については、その内容が次の@及びAのいずれかに該当していることが求められています。

@ 社員が経営する社会福祉事業の従事者の確保(※1)のための支援

A 社員が経営する社会福祉事業の従事者の資質の向上を図るための研修

※1   「社会福祉事業の従事者の確保」には、次のような多様な取組が広く含まれます。

・ 新たな従事者の募集や採用、外国人材の受入れの調整等多様な人材の確保のための取組

・ 社員間の人事交流の支援等既存の従事者が職場に定着するための取組

・ 学生に対する職場体験の調整等福祉の仕事の魅力を発信するための取組

〈職業紹介事業・労働者派遣事業への抵触に注意〉

人材確保等業務には、連携推進法人が社員間の人事交流を支援することも含まれますが、労働関係法令に抵触しない方法で行う必要があります。

例えば、連携推進法人が自ら求人及び求職の申込みを受け、社員である法人との間の雇用関係の成立をあっせんすることは職業安定法に定める職業紹介事業に該当し、連携推進法人と従業員とが雇用契約を締結し、当該従業員を社員である法人の指揮命令において当該社員の下で労働に従事させることは、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)に定める労働者派遣事業に該当するものであり、職業紹介事業又は労働者派遣事業を行う場合は、別途職業安定法又は労働者派遣法の規定に基づき、適正な手続により許可を得ることが必要となります。

〈委託募集の手続きについて〉

社会福祉法第134条の規定に基づき、社員が連携推進法人に対し、社会福祉事業に従事する労働者の募集を委託する場合には、「社会福祉連携推進法人認定・運営基準」通知の別紙2の「委託募集の特例の実施方法」に従って行う必要があります。

3)人材確保等業務の内容例

人材確保等業務の内容については、社員が提供する福祉サービスの従事者の確保、その職場への定着、資質の向上などを図る観点から、例えば次のようなものが挙げられています。

・ 社員合同での採用募集

・ 出向等社員間の人事交流の調整

・ 賃金テーブルや初任給等の社員間の共通化に向けた調整

・ 社員の施設等における職場体験、現場実習等の調整

・ 社員合同での研修の実施

・ 社員の施設等における外国人材の受入れ支援(経営支援業務である介護職種に係る技能実習の監理団体として行う業務を除く。)

6.物資等供給業務

1)物資等供給業務とは

物資等供給業務とは、社員が経営する社会福祉事業に必要な設備又は物資の供給を行う業務を言います(図表9)。

(図表9) 物資等供給業務

図表9
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2)物資等供給業務の要件

物資等供給業務については、その内容が次の@及びAのいずれにも該当しているものであることが求められています。

@ 社員が経営する社会福祉事業に必要な設備又は物資であること

A 当該設備又は物資を連携推進法人が供給すること(※1)

※1  「当該設備又は物資を連携推進法人が供給すること」には、連携推進法人が一括調達して社員に供給することのほか、連携推進法人が生産して社員に供給することを含むものとされています。

なお、食品衛生法等の関係法令を遵守した上で、社員から連携推進法人が委託を受けて、社員の施設等で提供される給食についてもこれに含まれるとされています。

3)物資等供給業務の内容例

物資等供給業務については、社員の物資調達に係る費用の効率化、事務負担の軽減などを図る観点から、例えば次のような内容が挙げられます。

・ 紙おむつやマスク、消毒液等の衛生用品の一括調達

・ 介護ベッドや車いす、リフト等の介護機器の一括調達

・ 介護記録の電子化等ICTを活用したシステムの一括調達

・ 社員の施設等て?提供される給食の供給

7.社会福祉連携推進業務以外の業務

社会福祉連携推進業務以外の業務(以下、「その他業務」という。)については、社会福祉連携推進業務に関連する業務であって、以下の要件が満たされれば、事業内容について特段の制約はなく、実施することができるとされています。

@ その他業務の事業規模が連携推進法人全体の事業規模の過半に満たないものであること

A その他業務を行うことによって社会福祉連携推進業務の実施に支障を及ぼすおそれがないものであること

B 社会福祉事業その他社会福祉を目的とする福祉サービス事業でないこと

このほか、その他業務については、連携推進法人の社会的信用を傷つけるおそれのあるもの又は投機的なものは適当ではないこととされています。

また、その他業務から得られた収益は、社会福祉連携推進業務に充当することとされています(図表10)。

(図表10) 社会福祉連携推進業務以外の業務

図表10
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V.社会福祉連携推進法人のガバナンス

社会福祉連携推進法人のガバナンスについては、図表11の通りです。社会福祉連携推進法人は、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下、「一般法人法」という。)に基づく一般社団法人として設立・登記され、これに一定の要件を具備したことを所轄庁が認定の上、登記されることによって法人として成立します。

従って、社会福祉連携推進法人に関するガバナンスの基本的な骨格は、一般法人法に定めるところに従うことになります。

1.社員・社員総会

具体的には、一般社団法人は「社員」と呼ばれる主体によって構成されます。そしてその社員が議決権を行使することによって法人運営の意思を決定することになります。そのための議決機関のことを「社員総会」と呼びます(図表11)。

(図表11) 社会福祉連携推進法人のガバナンスルール

図表11
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出典:社会福祉連携推進法人の運営等について(厚生労働省) PDF[4MB]リンクアイコ

2.理事・理事会、監事

社員総会の議決に基づいて法人の業務の執行を掌理するのが理事であり、理事によって構成される会議体を理事会と呼びます。理事はその代表者として理事長を選任します。

さらに法人には監事を置き、理事及び理事会が行う法人運営の適正について統制監督を行うものとされています(図表12)。

(図表12) 連携推進法人における法人ガバナンスの概要

図表12
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出典:社会福祉連携推進法人の運営等について(厚生労働省) PDF[4MB]リンクアイコ

3.社会福祉連携推進評議会

社会福祉連携推進法人には、一般法人法の定めにない機関として社会福祉連携推進評議会という機関が設置されることとなっています。

社会福祉連携推進評議会とは、連携推進法人の意見具申・評価機関として、理事会の決議に基づき代表理事が招集することになっています。

社会福祉連携推進評議会の構成は、地域の福祉の増進に資するよう、連携推進法人が実施する社会福祉連携推進業務の種類に応じ、福祉サービスを受ける立場にある者、社会福祉に関する団体、学識経験者をはじめ、幅広い視点から、中立公正な立場で、連携推進法人に対して意見を述べることができる者が含まれることとなっています。また、そのなかには、社会福祉連携推進区域(連携推進法人が業務を実施することとしている区域のこと)の福祉サービスの実情に通じている者を必ず加えることとされています(図表13)。

(図表13) 社会福祉連携推進評議会の位置付け等について

図表13
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出典:社会福祉連携推進法人の運営等について(厚生労働省) PDF[4MB]リンクアイコ

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